日本のメディアでも、イ大統領が「日韓協力」と「統合」を強調した点に注目し、新政権が実用外交を展開するとの期待と、かつての「反日」イメージへの回帰を警戒する声が交錯している。
それは、 日韓関係が最悪だったムン・ジェイン(文在寅)元大統領の時代に回帰すると思われているからだ。確かにムン元大統領もイ新大統領も同じ「共に民主党」に所属しているが、派閥は異なる。イ大統領は「共に民主党」の上層部のなかでは少々毛色が異なっているのだ。
イ・ジェミョン新大統領、人気の理由
前述したように、イ大統領は少年工から立身出世した苦労人だ。大卒ではあるが、中学や高校は検定試験で済ませている。貧しさから脱するために学生運動にも参加せず、勉学に専念し、司法試験に合格する。そして、弁護士になってからは市民運動に参加することで、人権派弁護士として名を知られてきた。
一方、「共に民主党」のエリートたちは、苦学したといっても中学も高校も順風満帆に卒業しており、大学生になってからは学生運動も経験している。日本では「玉ねぎ男」として知られる元法務長官のチョ・グク(曺国)氏においては、某財団の御曹司でもある。
そんな出身の異なるイ・ジェミョン氏が大統領の座に座ることになったのは、彼のカリスマ性のなせるわざのようにも思われる。城南市の市長や京畿道の知事時代に培った成果、つまり彼が自治体の長を務めたときに、その地域の経済を活性化させてきたという実績が、イ大統領の人気をさらに高めているのだ。
いまのところ、苦労人のイ大統領が、損得を考えずに「反日」に向かうはずはないと考えられている。現在は、日韓関係を良好に保つほうが韓国には有利と考えれば、そのように対応するということだ。またイ大統領は、対中外交については「安定的に管理する」としており、南北関係では「互恵的な対話と交流協力」を推進する方針を示している。
イ・ジェミョン第21代韓国大統領は「国益を最優先する実用外交」を掲げ、米韓日安保協力を軸にしつつ、中国やロシアなど周辺国との関係もバランスよく管理する姿勢を明らかにしている。
このように今回の韓国の大統領選挙は、混乱と熱狂のダイナミズムと劇的な人間ドラマ、そしてスキャンダルを乗り越えた新リーダーの誕生でフィナーレを迎えた。


