欧州

2025.06.06 10:00

「NATO崩壊」視野に次の手を模索、リトアニア前外相 米国との信頼が揺らぐ中

リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス前外相。2021年9月28日撮影(Horacio Villalobos#Corbis/Corbis via Getty Images)

NATOは今後どうなるのか?

では、NATO自体についてはどうだろうか? ランズベルギス前外相をはじめとする欧州人は、なぜ地域同盟に注目しているのだろうか? 地域同盟は、崩れかけた屋根に継ぎを当てているだけではないのだろうか? NATOを再考した方が理にかなっているのではないだろうか?

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ランズベルギス前外相はそのように考えていない。同前外相は、CBSSの全面的な見直しを勧告する報告書の中で「最終的には、安全保障上の主要な決定は常にNATOと欧州連合(EU)を通じて行われることになる」としている。だが、これについて同前外相は、外交的に記述したことを認めている。そして長期的には、根本的で広範囲にわたる改革が必要になるかもしれないと認識している。

問題は、絶対に必要になるまで、誰も船を捨てようとしないことだ。欧州の首脳は、ランズベルギス前外相が「自己実現的予言(訳注:根拠のない思い込みであってもそれを信じて行動することで、その思い込みが真実になるという心理現象)」と呼ぶ事態を懸念している。欧州では、NATOの崩壊を口にするだけでトランプ大統領の怒りを買い、突然の米軍撤退を促すことになり、同機構の崩壊を引き起こす恐れがある。ランズベルギス前外相は、欧州は「最後の瞬間まで現実を否定せざるを得ないだろう」と述べ、厳しい立場に置かれている関係者に同情の目を向けた。

同前外相は、今月末にオランダのハーグで開催されるNATO首脳会合には何の期待も抱いていない。NATOは同盟関係の緊張に立ち向かうどころか、軍事費増額という楽観的なメッセージで現実をごまかし続けるだろうと予測している。恐らくスペイン以外のNATO加盟国はすべて、トランプ大統領が定めたGDPの5%を国防費に充てるという目標の達成を約束するものとみられる。ランズベルギス前外相は、会合に出席する首脳らは「かろうじて生きている人の手を持ち上げて、『ほら、手を振っているよ』と言うだろう」と、皮肉を込めて予想した。

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ロシアがウクライナへの攻撃を強め、NATOの東側で軍事的な存在感を増すとともに、国防費を増額してフィンランド国境沿いに基地を建設する中、欧州は今後どうなるのだろうか? 恐らく、現時点での唯一の答えは、NATOの次の手の部分的な代替案を寄せ集めた形になるだろう。

ランズベルギス前外相は「私は自国の将来を懸念する1人の人間として話している」と説明する。「われわれは自らを守れるようにならなければならない。もしわれわれが単独で戦っていたら、一体どのくらい戦わなければならないだろうか?」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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