ナルシシストは自分の信念の正しさを大いに過大評価する傾向がある。自分のものとは異なる観点に直面すると防衛的になり、闘争的にさえなる。専門誌『Frontiers in Psychology(フロンティアーズ・イン・サイコロジー)』に2023年に掲載された研究が説明しているように、これはナルシシストが知的謙虚さをかなり欠いていることが多いためだ。
その結果、ナルシシストは誇張された自身のイメージを守るのに、巧みに議論を操作する戦術に大きく依存している。こうした戦術をそのまま受け止めれば賢い、あるいは知的といった印象を与えるかもしれない。しかし実際にはこうした戦術は論理よりも支配に重点を置いている。
専門誌『Memory & Cognition(メモリー・アンド・コングニッション)』に2024年に掲載された研究でも、このような稚拙な主張の戦術をとりがちな人は、自分の既存の信念を裏付ける情報を受け入れ、それに固執する傾向が強いと指摘されている。
ナルシシストはこの認知バイアスを悪用して他人の思考力を阻害する。矛先を向ける人の恐怖や不安をかき立てるように、あるいは自分の歪んだ自己イメージを守るよう議論を組み立てる。
そのため、ナルシシストは説得力があるように感じる(欠陥のある)推論の網をめぐらすことに長けているが、そうした主張は実際に精査されるとすぐに崩れてしまう。言い換えると、ナルシシストが頼る主張戦術の多くは誤りに満ちており、自分に向けられた非難をそらし、会話を脱線させることが目的だ。そうして自分が状況を支配できるようにしている。
以下にナルシシストがよく頼る5つの誤った戦術と、こうした戦術に頼っている理由を解説する。



