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2025.06.06 08:00

ドルの「法外な特権」は終焉へ 浮上のチャンスうかがうユーロ

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5月下旬、筆者はフランクフルトとダブリンで、ドナルド・トランプ米大統領の経済政策が投資ポートフォリオに与える正味の影響について、聴衆から質問を受けた。連日、政策のカオスのような状態が続いているせいで、多くの投資家はどうもトランプが市場に及ぼす影響を過大評価しているようだ。奇妙なことに、この記事を執筆している時点では、米国の株式市場と債券市場は3月とほぼ同じ水準で取引されている。とはいえ、投資家の信頼感が損なわれているのは確かだ。

金融市場にはありがたいことに、トランプが引き起こしているリスクの一部をヘッジ(回避)できるという“ゆとり”がある。それに対して社会や経済、政治体制は、彼の行動による影響、たとえば外国直接投資、政治的議論の質などへの影響を相殺するのがもっと難しい。

投資の観点からいうと、筆者はトランプによるポートフォリオへの正味の影響を「特権の終焉」と名づけている。どういうことかというと、1960年代にフランスのヴァレリー・ジスカールデスタン財務相(のちの大統領)が「法外な特権」と表現したように、米国資産一般、なかでもドルが特別な恩恵を享受してきた状態が、ゆっくりと終わりを迎えているということだ。具体的には、セーフヘイブン(安全な逃避先)としての米国債の役割を投資家が疑問視し始め、ドルは(非常に割高な水準から)時間をかけて徐々に弱くなっていくと見込まれる。

トランプが進めている一連の経済政策は、長期的に米国の成長と社会の根幹を混乱させ、損なうものである(彼の包括的な税制・歳出法案「一つの壮麗な法案」は貧困世帯よりもむしろ富裕世帯にとって都合のよいものだ)。さらに、説明責任という意識はかなぐり捨てられ、腐敗が恥知らずなほど公的領域を侵食している(このトピックを扱ったニューヨーカー誌のエヴァン・オスノス記者の記事は出色だ)。要するに米国は、ずさんな統治の新興国のような経済的特徴を帯び始める危険があるのだ(極端な比較ではあるものの、トルコの過去5年の通貨リラや債券相場のパフォーマンスに目を向けてもいい)。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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