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2025.06.06 08:00

ドルの「法外な特権」は終焉へ 浮上のチャンスうかがうユーロ

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ドルの法外な特権が剥落していくとして、では代わりにどんな資産なり通貨なりが利益を得ることになるのか? これが次の問題だ。まず、筆者の印象では、たとえばトルコのような新興国で何かよからぬことが起こったとき、資本はスイスのような国に流れる傾向がある(理由は単純で、そうした資本の大半は少数の個人によって保有されているからだ)。他方、はるかに規模の大きな機関投資家の資金は、本来はユーロ圏に向かうのが筋だろう。だが、実際にはそうなっていない。2024年末、筆者はシンガポールとアラブ首長国連邦(UAE)に1週間ほど滞在したのだが、何人もの投資家がユーロ圏はほとんど投資に値しないと考えているのを知って驚いた。これは彼らが事情に疎いという面もあるかもしれないが、ユーロ圏が国際的な信認という点で問題を抱えていることもうかがえる。

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その関連で筆者が興味をそそられたのは、欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁がベルリンで3月26日に行った講演である。「影響力の獲得──国際通貨の歴史に学ぶ教訓」と題されたこの優れた講演で、ラガルドは支配的な通貨の特徴として次の3つを挙げている。①規模の大きな経済国・地域によって発行されている②外国人投資家が買うことのできる潤沢な金融資産プールがある③健全な法制度によって裏づけられている──だ。

ラガルドの講演内容には、同時代的に重要な2つの認識が含まれていた。ひとつは、トランプ政権の行動はドルを構造的に弱体化させるとの見通しを示したこと。もうひとつは、ユーロ圏は資本市場を深化させて、不安定化する世界で安全資産を提供することができていないと、率直に認めたことだ。

これらの発言の背景にあるのは、ユーロ圏による「貯蓄投資同盟(SIU)」と呼ばれる新たな資本市場統合の取り組みだ。これは①欧州連合(EU)全域の金融サービスを管轄する単一の規制機関を創設する②EUのいくつかの金融都市の専門拠点化を進める(たとえばアムステルダムは株式、パリはプライベートエクイティといったふうに)③個人貯蓄や年金資産のプライベート資産への流入を促進する──という3つの柱から成る。ちなみにユーロ圏には2026年、21カ国目としてブルガリアが加入する見込みだ。

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いくつもの点で、SIUは奇妙な現象である。欧州の将来にとってきわめて重要な政策であるにもかかわらず、大半の欧州人はそれにほとんど関心を持っていないのだ(彼らを責めるわけにもいかない)。ともあれ、ドイツの貯蓄銀行に眠る数千億ユーロをプライベート投資に流すことなどに加え、欧州で必要とされているのは、リスクをとる姿勢への構造的な転換だろう。それが起こるためには、“欧州版トランプ”の登場が必要かもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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