素晴らしい仕事の条件を整える
この調査では、パフォーマンスの差は能力ではなく、環境によるものがほとんどであることが明らかになった。素晴らしい仕事をする従業員の割合が高い組織には、いくつかの共通点がある。
・素晴らしい仕事をする従業員の割合が高い組織は、成果だけでなく、行動面からも素晴らしい仕事を定義している。数字や成果物だけに焦点を当てるのではなく、個々のタスクを超えたインパクトを生み出す具体的な行動を特定している。
・素晴らしい仕事をする従業員の割合が高い組織は、日々の業務と組織への影響を結び付けている。従業員は、自分の貢献が重要であること、自分の職務における素晴らしい仕事が、より大きな成功につながることを理解している。
・素晴らしい仕事をする従業員の割合が高い組織は、素晴らしい仕事の妨げになる障害を取り除く。善意に基づく方針や手続きであっても、その多くは意図せずして、最高のパフォーマンスの特徴である自主性、リスクを取ること、コラボレーションを阻害することがある。
・素晴らしい仕事をする従業員の割合が高い組織は、年次評価だけでなく、頻繁なコーチングを行なっている。素晴らしい仕事は、正式な定期評価ではなく、継続的な指導と、リアルタイムのフィードバックによって育まれる。
リーダーの必須条件
この調査の結果は、ほとんどの組織に、まだ活用されていない潜在能力の宝庫が隠されていることを示唆している。問題は、従業員が素晴らしい仕事をできるかどうかではない。そうした潜在能力を発揮できる環境を「リーダーが整えているかどうか」だ。
これは、パフォーマンス管理に関する考え方の根本的な変化を表している。素晴らしい仕事は、希少で得がたいものだという前提に立つのではなく、素晴らしい仕事とは何かを従業員が理解し、それを追い求めるための後押しがあると感じられれば実現できるものだと、リーダーこそ認識すべきだ。
これを早く理解した企業は、大きな競争的優位性を獲得するだろう。競合他社が、素晴らしい仕事ができるのは従業員の3分の1だけだという状態を受け入れている一方で、このことを理解している企業は、目に見えないものを可視化し、良い仕事と素晴らしい仕事を分ける、小さいながらも強力な行動を明確に定義することで、その割合を体系的に高めていける。
「36%」という問題は、実際にはまったく問題ではない。それは、難題に見えるが実際にはチャンスだ。部下の中にすでに存在している潜在能力を解き放てる、「大胆なリーダーが待たれているだけ」なのだ。


