モビリティ

2025.06.10 08:15

SFが現実に。地上からレーザーで飛ばすロケット、東北大が実証

プレスリリースより

トラクターミリ波ビーム推進機

もうひとつは、同じく高橋聖幸准教授らの研究チームが発表した「トラクターミリ波ビーム推進機」だ。ロケットの先端にレンズを配置し、そこに前方からマイクロ波を照射すると、レンズで集光されたビームが周囲の空気を加熱する。あとはレーザー推進とほぼ同じ。本体は筒状になっていて、前方から入った空気が後方に押し出される形だ。課題は、内部にプラズマが滞留して、推進力を弱めてしまうことだった。研究チームはプラズマの流れをうまく抑制する工夫を重ね、その結果、この方式で実際に推力が発生することを、世界で初めて実証できた。

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どちらもロケット本体に大量の燃料を積まなくても打ち上げが可能になるという、非常に画期的な方法だ。2つの違いは、ひとつにはレーザーかミリ波(波長が1〜10ミリメートルで30〜300ギガヘルツの電波)かがある。レーザー推進ではプラズマが超高温になるため大きな推進力が得られるが、実際にロケットを打ち上げるには大規模なレーザー発生装置が必要になる。一方ミリ波は、それほど大きな力は得られないが小規模な装置で対応できる。

もうひとつの違いは、後ろからか前からかだ。トラクターミリ波ビーム推進は、ミリ波の発生装置を小型化できるので、人工衛星に搭載すればロケットを軌道まで引っ張り上げることが可能になる。これはとくに、地球以外の惑星からロケットを打ち上げる際に威力を発揮する。現状では、往復の燃料を持っていく必要がある。そうでなければ現地で大量の燃料を生産しなければならない。だが周回軌道にミリ波発生装置を積んだ人工衛星を配置しておけば、燃料を使わずに引っ張り上げることができる。

これらの技術が実用化すれば、ロケットの打ち上げコストは大幅に削減され、誰もが気軽に宇宙に行けるようになる。そうなれば、巨大な炎を吐いて轟音と共に打ち上がる今のロケットは、煙を吐いて大きな車輪を回して走る蒸気機関車のように、前時代的な懐かしい存在になってしまうかもしれない。

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プレスリリース1
プレスリリース2

文 = 金井哲夫

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