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2025.06.09 09:15

ウナギが食卓から消える日。国際規制強化で価格高騰は新たな段階へ

Getty Images

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ご案内のとおり、ウナギは絶滅の危機が叫ばれている大変に貴重な生物だ。完全養殖が困難なウナギは、養殖とは言え天然の稚魚を捕ってきて育てるしかない。だからすべて天然と言ってもいい。それをバクバク食べちゃっていいものかと、どこかに罪悪感を抱いている人も少なくないだろう。そこで、安心してウナギが味わえるように、ウナギの出所について知っておこう。

近ごろ、EUがウナギ全種類をワシントン条約の規制対象とする提案を行うというニュースが話題になっている。もし規制対象となれば、ウナギの稚魚(シラスウナギ)の輸出に許可証が必要となり、シラスウナギの取引が難しくなる。つまりウナギの取扱量が減って価格がさらに高くなるということだ。ウナギは保護すべきだが、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでもっともランクの高い近絶滅種に指定されたヨーロッパウナギと絶滅危惧種のニホンウナギを同じに扱うのはどうなのか。

ヨーロッパウナギの激減は日本人のせいなのか?

最近見た海外ドラマに、アイルランドで不法に捕獲したウナギの稚魚を日本のヤクザが買い付けにくるという場面があった。ウナギと言えば日本というイメージがヨーロッパでは強いようだ。ヨーロッパウナギが絶滅寸前なのは、日本人が食べちゃったからだと誤解されているのかもしれない。本当にそうなのか。

世界自然保護基金(WWF)と中央大学は共同で、ウナギの取引や流通に関する最新のデータや調査結果をファクトシート『ウナギ類の資源管理・流通の現状について』として発表した。普段食べているウナギの種類や出所は、蒲焼きにされてしまうと見た目ではわからない。そこで中央大学は、2024年に国内の小売店で販売された133点の蒲焼きのDNAを解析して、その種類を確かめた。

それによれば、ニホンウナギが約60パーセント、アメリカウナギが約37パーセントで、ヨーロッパウナギはわずか1.5パーセントだった。また、国産と銘打たれた51サンプルはすべてニホンウナギで、残る82サンプルはすべて中国産で、その半分以上がアメリカウナギという結果が得られた。ヨーロッパウナギはほとんど輸入されていない。とはいえ、ヨーロッパウナギが激減したのは1990年代のシラスウナギの乱獲が原因で、当時それを大量に輸入していた日本に責任がある。

WWF『ウナギ類の資源管理・流通の現状について』より
WWF『ウナギ類の資源管理・流通の現状について』より
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文 = 金井哲夫

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