2025.06.15 14:15

ウルトララグジュアリーリゾートで「お金では買えない」価値を知る

フィジーのリゾート、「コモ ラウカラ アイランド(COMO Laucala Island)」(Como Laucala Island)

リゾートマネージャーのアンドレ・ミーシグさんによれば、このリゾートで働くのは近隣の島の人たちが多いという。「彼らは、お金ではなく、幸せであることをとても大切にする。彼らにとって幸せなのは、人をもてなし、その相手と心の交流ができること。それができていないと感じたら、島へ帰ってしまう。村の自給自足の暮らしで十分幸せなのです」。

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それを感じたのは、ダイビングに行った時のこと。リゾートからボートで50分ほど行ったところに、世界の10大ダイビングスポットにも選ばれた「ホワイトウォール」がある。洞窟からエントリーし、水深約30メートルまで潜ると、前後左右見渡す限り、真っ白な生きたサンゴでできた壁が広がる場所だ。

筆者の経験値からすると少し上級者向けだが、潜ってみたいと伝えると、ボートでポイントについてから、海流が落ち着くまで1時間ほど待ってくれた。通常なら、海流の弱い別のポイントにゆき、終了時間通りに済ませるところだろう。プライベートダイビングだからだけではない。ゲストの希望に最大限寄り添う温かな思いがある。

絶景を楽しんだダイビングからの帰り道、ボートが洋上で止まってしまった。しかし、15分もしないうちに近くの島から助けのボートが来てくれた。運転していた男性、ナイジェルさんに感謝を伝えると「僕の母が病気で危険な状態になった時に、このリゾートに助けてもらったんだ。お互い様だよ」と笑顔を見せた。この辺りでは「スリ」と呼ばれる考え方で、人はお互い助け合うのだという。

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リゾートに帰る頃にはあたりは真っ暗で、空には満天の星。所々に島影はあるが、灯りは見えない。ナイジェルさんが運転するボートに乗りながら、考えた。今ここで海に放り出されたら、筆者などは生きてはいけないだろう。大自然の中で、人間は無力だと感じさせられた。

このリゾートを訪れるゲストは、色々なものをコントロールし、成功してきた人々だろう。日々さまざまな目標と向き合い、それを達成することが現代の価値だとされている。しかし、大自然のただ中に身を置き、自然というコントロールできないものと向き合うことは、畏敬の念と共に、どこか安らぎを感じるのではないか。

コントロールできないものがあってもいい。そもそも、ゴールとは誰が設定したのだろう? 生きることの根源とは今という時間を慈しむことなのかもしれない。そんな思いが星空のもと、心に落ちてきた。同時に、相手の気持ちを大切に、心からの交流を大切にする人たちとの出会いは、人生で大切にするべきことを教えてくれる。その気持ちこそ、ゲストが何度も帰ってくる理由でもあるのかもしれない。

滞在中に、「ブラ!」という挨拶の意味を教えてもらった。それは、フィジー語で「命」という意味だった。お互いにそう声を掛け合うのは「今日も命がある、それを慈しみ、大切に生きましょう」という思いが込められてるのだという。命を慈しみ、幸せのために暮らす。そんなお金では買えない、根源的な価値が息づくリゾートがいま、多くの人を惹きつけている。

文・写真=仲山 今日子

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