気候・環境

2025.06.19 08:45

自然に投資しなかったら、私たちは何を失うのか?

(c)Conservation International

ブラジル マットグロッソ・ド・スルの農園にて(c)Flavio Forner
ブラジル マットグロッソ・ド・スルの農園にて(c)Flavio Forner

これは、自然から一方的に奪う時代を終わらせ、自然の再生をビジネスの一部とする「次の経済」への兆しかもしれません。問いは変わりつつあります。「なぜ自然に投資すべきか?」ではなく、「投資しなかったら、私たちは何を失うのか?」と。

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自然に投資しなければ、経済の安定性も、サプライチェーンの信頼性も、健康な暮らしを支える“見えないインフラ”も、少しずつ、確実に失われていくでしょう。気候変動や生物多様性の喪失は、単なる環境問題ではなく、私たちの事業活動の前提条件が崩れていくことを意味します。

自然に投資するとは、どういうことか?

CIは長年、自然と人(企業)、双方に価値をもたらす投資のあり方を模索、実践しています。すでに世界に数多く存在するイニシアチブのなかでも、ここではファンド、カーボン市場、持続可能な生産という3つのアプローチに触れたいと思います。

まず明確なのは、この挑戦は、単独では成果が出ないということ。グローバル市場においては、セクターを超えたパートナーシップから生まれたインパクト重視型のファンドが成果を出し始めています。CIは、アップル社の「Restore Fund」や、ブラジル最大の独立系投資銀行BTG Pactual の「Latin American Reforestation Fund」など、大規模な自然再生ファンドのインパクト・アドバイザーを務めています。

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たとえばBTGの事例では、5年間で10億ドルを投じ、ラテンアメリカの一部地域において、かつて森林が失われた土地の再植林や生態系の回復を通じてCO2を吸収し、保全を進めています。その上で、持続可能な木材やカーボンクレジットの販売によって収益を上げ、投資家には控えめながら着実に収益リターンを返しています。多くの企業が炭素除去を「コスト」と捉えるなか、自然を「戦略的アセット」として再定義し、実際に投資先として機能することを証明し、他の民間投資家の参入も後押ししているのです。

自然由来のカーボン・クレジット市場も、重要な資金メカニズムとして注目が高まっています。クレジットの品質やインパクトに関しては改善の余地があるものの、公的資金だけでは到底まかなえない環境保全の財源ギャップを埋める手段として、その存在感はますます大きくなっています。

また、自然を守る担い手である地域コミュニティがその貢献に見合った利益を得られなければ、保全は持続しません。適切に設計された自然由来のカーボン・プロジェクトは、財務的インセンティブと環境再生を結びつけることで、こうした課題に応える有効な手段となり得ます。

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