テクノロジー

2025.06.08 15:00

NFTはオワコンなのか 転売ヤー、ノーショーをNFTが解決する日

「NFTは魔法の杖ではない」

今回取り上げた事例のほかにも、NFTは教育支援や貧困救済、災害復興などの場面でさらなる活用が期待されている。クリプトエコノミクスに詳しい慶應義塾大学経済学部教授の坂井豊貴は、「貧しい人を助けるには、公教育や再分配といった政府の役割が大切だが、それだけではまったく足りない。NFTを活用した新たな金融の仕組みで貧しい人を助けることができればいい。貧しい人に投資して、うまくいくと回収する仕組みだ。こういう金融的な仕組みを生理的に嫌がる人がいるのは分かるが、大事なのは人を救うことだ」と話す。

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では、NFTは社会課題を解決に導くための道具になりうるのだろうか。坂井は「結論、イエスです」としつつも、「金融的な仕組みを金融の業法に触れないよう、合法的につくるのが難しい」と指摘する。特に証券として分類されないように注意する必要がある。

「証券性を回避しようとすると、できることが限られる。NFTに詳しい弁護士に相談せねばならないが、そういう弁護士は多くない。真面目にやろうとすると、リーガルコストは高くなる。海外法人の設立まですると、初期のスタートアップなどには結構な負担になりうる」

それなら金融規制を緩和すればいいという問題でもない。「緩和すれば投資詐欺が横行するのは明らか」(坂井)だからだ。証券性のほかにも、NFTを活用する際には知的財産権やデータ保護、国際的な規制の差異など、多くの法的課題を考慮する必要がある。十分に理解しつつ、安全かつ持続可能なNFT関連ビジネスを構築することが不可欠だ。

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NFTが一般企業や一般市民に受け入れられ、社会課題解決のために実装されるようになるにはクリアすべき課題が多く残されている。まずはウォレット管理の複雑さだ。例えばTHE GRAND HOTEL COLLECTIONの場合、宿泊権を付与したNFTを第三者に転売するには顧客が自らウォレットをつくる必要がある。FRWAがマニュアルを提供しているとはいえ、一般の人がゼロからウォレットをつくるには「最低でも1時間はかかるだろう」(FRWA)。ITに不慣れだと、さらにハードルは上がる。UIやUXを工夫することでブロックチェーンやNFTの技術的なハードルを下げ、使いやすいサービスに仕立てることが肝要だ。企業や自治体間の連携やアライアンスを進める際にも同じことがいえる。

そして何より、ブロックチェーンやNFTを使うことの必然性を示す必要がある。「NFTは魔法の杖ではない。事業や実業をNFTでドライブする方法を考えるべきであって、NFTファーストではうまくいかないだろう」という坂井の指摘には頷くばかりだ。既存の手法と比較して、どんな優位性があるのか。そこを深掘りしていくことで、ビジネスや活動の真意や理念、哲学が見えてくる。

これらの課題をクリアすることで、NFTは社会課題解決のための道具として広く活用されるようになると期待したい。そして国内外に点在する自律的な取り組みが有機的につながりあったとき、Web3がもつ真の価値が体現されるのだろう。


KEYWORD

ソウルバウンドトークン
非代替性(ほかのトークンと置き換えることができない性質)をもつ点はNFTと同じだが、ウォレットIDに紐付けられた譲渡不可能なトークンのこと。各種証明書やデジタルIDなどへの活用が期待されている。

ウォレット
仮想通貨やNFTなどのデジタル資産を管理するための場所。物理世界における財布のイメージに近いが、ウォレット内にはデジタル資産そのものではなく、「秘密鍵」と呼ばれるデジタル資産の送受信に必要なコードが保存される。

分散型ID(DID)
ブロックチェーンなどの技術を用いて、従来の中央集権的な管理者なしに個人がIDを自分自身で管理し、必要な情報を必要な範囲内で共有することができる仕組みのこと。DIDは相互運用性があり、複数のサービスで利用可能。


担当者の目 

瀬戸久美子|Forbes JAPAN コントリビューティング・エディター/特集デスク兼任

技術は社会をどう変えるのか。この問いに向き合うなかで、Web3やブロックチェーン技術は避けては通れないキーワードです。今回はNFTを軸に、社会課題の解決に挑む企業や自治体に光を当てました。取材を通じて繰り返し聞いた質問は、「NFTを使うことの必然性はどこにあるのか」。その答えを一般大衆に向けてわかりやすく説明できない限り、「NFT×社会課題解決」の流れは加速しないと実感しています。


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文=瀬戸久美子 イラストレーション=ジェームズ・ギリアード

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