今年の暗号資産業界で注目されるイベントのひとつが、米国時間6月4日に予定されているステーブルコイン「USDC」の発行元の米Circle(サークル)の新規株式公開(IPO)だ。この分野で最大手のテザーに次いで2位とされるサークルは、27〜28ドル(約3888円~4032円。1ドル=144円換算)の価格帯で3200万株のクラスA株を提供予定で、評価額72億ドル(約1兆円)を目指している。
複雑で脆弱なビジネスの実態
サークルのビジネスモデルは、ステーブルコインの準備資産を米国債に投資して利回りを得るというもので、ユーザーは実質的に同社に無利子でドルを貸している形になる。しかし、この一見シンプルなモデルの裏には、より複雑で脆弱なビジネスの実態がある。
金利の先行きが不透明な中、サークルは競争が激しいこの業界において市場シェアを拡大するか、あるいは市場の成長と共に自社も成長していく必要がある。さらに、同社の長期的な成功は、ステーブルコインの関連プロダクトを通じた収益の多角化にもかかっている。
時価総額8.7兆円のUSDC
ステーブルコインは、暗号資産市場をひそかに底支えする役割を担っており、伝統的な金融業界にとっても重要度を増している。ステーブルコインによる取引ボリュームは2024年に27.6兆ドル(約3974兆円)に達し、Visaとマスターカードの合計の取引量を約8%上回った。
ステーブルコイン全体の時価総額は現在2480億ドル(約35.7兆円)に達しており、そのうちサークルのUSDCは約600億ドル(約8.7兆円)を占めている。シェアとしては、テザーのUSDTが61%と首位にあり、次いでUSDCは25%と2位につけている。また、ユーロ建てのステーブルコインでは、サークルのEURCが時価総額2億2400万ドル(約322億円)と首位に立っている。
サークルの際立った点は、規制を遵守する姿勢にある。USDCは、米国において暗号資産と伝統的金融の橋渡しとして、規制に準拠した立ち位置を築いてきた。また、欧州では、MiCA(暗号資産市場規則)の導入と、それに伴いライバルのUSDTなど「非準拠ステーブルコイン」が主要取引所から上場廃止とされたことで、USDCが欧州の主要なステーブルコインとなる道が開かれた。
シティグループの最近のレポートによれば、ステーブルコイン市場は2030年までに1.6兆ドル(約230兆円)に達する可能性がある。規制への準拠を最優先する姿勢を持つサークルは、この成長から大きな恩恵を受ける立場にある。



