サークルのIPOは、すでに大幅な需要超過
投資家たちは、投資する価値はあるものと考えているようだ。ブルームバーグによると、サークルのIPOは、5月28日時点ですでに大幅なオーバーサブスクライブ(需要超過)の状態にあった。それを受け、同社は目標バリュエーションを従来の56億5000万ドル(約8136億円)から72億ドル(約1兆円)に引き上げた。
投資家たちの見立てには根拠があるのかもしれない。ステーブルコインは、特に米国が中央銀行デジタル通貨(CBDC)に対してますます敵対的な姿勢を強める中で、事実上の「デジタルドル」と見る向きがあるからだ。そしてステーブルコインが対象とする市場は、国際送金や機関投資家向け決済、DeFiの統合などと幅広く、サークルがこれまでに築いたインフラや規制対応の体制は、JPモルガンやウェルズ・ファーゴ、シティなど金融大手が独自のステーブルコイン構想を打ち出す中でも、優位に働く可能性がある。
「プロダクトを基盤とする、より難易度が高い収益モデル」に移行できるか
暗号資産関連の株式に強いエクスポージャーを持つ資産運用会社バルタザール・キャピタルの創業者ベンジャミン・ビラランは、こう述べている。
「ステーブルコインは今、本格的な普及のための転換点に差し掛かっており、サークルのIPOはまさに絶好のタイミングだ。先日上院で可決されたGENIUS法案が成立すれば、ステーブルコインの潜在力を最大限に引き出すための規制上の明確性がもたらされることになる。そして、コンプライアンス重視の姿勢を貫いてきたサークルこそが、その恩恵を享受できる立場にある」。
米国史上最も包括的なステーブルコイン法案とされるGENIUS法案は、5月21日に上院を通過し、下院に送られた。トランプ政権の「暗号資産担当」のデービッド・サックスは、「この法案は超党派の強い支持を得て可決されるだろう」と述べていた。筆者は、この動きは、サークルのIPOにとって、まさに最高のタイミングととらえている。
サークルへの投資は、単なる金利への賭けではなく、規制の枠組みに置かれた暗号資産の未来に対する賭けなのだ。ステーブルコインの採用が進む中で、コンプライアンス重視のモデルを掲げるサークルは、決済システムの中核的な存在となる可能性がある。そして、サークルの投資家にとっての注目ポイントは、この会社が「金利がもたらす安易な収益」に依存するビジネスモデルを脱し、「プロダクトを基盤とする、より難易度が高い収益モデル」にうまく移行できるかどうかだ。サークルのIPOに問われている最大の疑問はそこにあり、市場が近くその答えを示すことになる。


