スタートアップ

2025.06.05 15:15

労働力拡大の終焉、AIが迫る組織モデルの再構築

変わりゆく営業・顧客サポートの定石

従来、ビジネスディベロップメント担当(BDR)は、月あたりに設定できた商談数で評価されてきました。しかし今では、ApolloやOutreachのようなAIを活用したセールスオートメーションツール、あるいは新たに登場しているエージェント型のセールスツールを使うことで、追加の人員をほぼ増やすことなく大幅にリードを増やすことが可能になっています。

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顧客サポートの分野では、チャットボットやAI対応のチケッティングシステムによって、応答時間は数時間から数秒へと劇的に短縮されました。かつては1人のサポート担当が1000人の顧客を見ていた体制でも、AIが基本的な問い合わせの大部分を処理することで、1人で5000人、あるいはそれ以上の顧客に対応できるようになりつつあります。AIを活用した顧客メッセージングのリーダーであるIntercomによると、同社のチャットボットは現在、サポート依頼の50%を即時解決しており、人間の手を必要としない領域が急速に拡大しています。最終的には、完全に人の介在が不要になるかもしれません。

AIファースト:新時代のビジネス必須戦略

先進的な企業は、AIを前提に採用計画を再構築し始めています。従来型の発想でまず人員を増やすのではなく、「AIで対応できるかどうか」を先に検討し、AIでは対処できないと明確に判断できる場合のみ人を採用するという方向にシフトしているのです。こうした変革には大きな意味があります。

スリム化されたオペレーション: スタートアップは、より少ない人数でより早く事業を拡大し、市場投入までの時間を短縮しながら効率を高められます。
指標の変化: セールスの効率やサポート体制、従業員一人当たりの収益といったKPIがリアルタイムで再定義されつつあります。
投資家の視点: ベンチャーキャピタルは、スタートアップが想定する人員計画を厳しく見直し、本当にそこまでの人手が必要なのかを問いただすようになるでしょう。

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既成概念の終焉

AIは、企業や投資家、そして政府に対して、深く根付いた前提を改めて問い直すよう迫っています。日本のように人口が減少する国であっても、徹底した自動化によって経済活動を維持できることが証明されるかもしれません。AIとロボットは、大規模な労働力を代替しながら業務を継続する可能性を秘めています。スタートアップもまた、これまでの固定的な採用比率を捨て、AIがもたらす効率性に適応していかなければなりません。

AI時代で成功を収める企業とは、自らの前提を見直し、人員構成をオートメーションに適した形に評価し直し、AIファーストの戦略を徹底する企業でしょう。従来のルールはもはや通用しません。変化に応じて柔軟に対応する者だけが、この新時代で繁栄を築くことができるのです。

連載:VCのインサイト
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文=James Riney

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