これまで40年余り、実社会において、様々な若手人材の成長を見てきたが、その学びから、将来、大きく成長する若手人材と、成長が壁に突き当たる人材は、かなり明確に予測できるようになった。
では、その判断基準は、何か。
それは、その若手人材が、次の「二つの資質」において、優れているか否かである。
「リズム感」と「バランス感覚」
この二つの資質に優れていれば、その若手人材は、ビジネスの世界で、将来、その能力を大きく開花させていく可能性が高い。逆に、どれほど高学歴であっても、この二つの資質に劣る人材は、残念ながら、よほどの努力をしないかぎり、ビジネスの世界で活躍することはできない。
では、なぜ、ビジネスの世界において、この「リズム感」と「バランス感覚」が重要なのか。
その理由は、ビジネスとは、徹頭徹尾、「人間の心」を相手にする営みだからである。それが、マネジメントにおける上司や部下であっても、商談における顧客や業者であっても、職場における同僚や仲間であっても、いずれ、ビジネスとは、「人間の心」を相手にする営みだからである。
従って、ここで言う「リズム感」とは、自分勝手に好きなリズムで話をしたり、仕事を進めるという意味ではない。それは、相手のリズムに合わせて、こちらの会話や仕事のリズムを変えられる「しなやかさ」のことである。
実際、「リズム感」の悪い人材は、顧客が急いでいるのに、それに合わせて自分のリズムを変えられず、逆に、会議の場などで、周りの気持ちを考えず、自分中心のリズムで会議を進めてしまう。
また、「バランス感覚」も、対人的能力である。
例えば、「営業」では、顧客に商品を買ってもらうためには、ある程度押しが強くないと、成果を出せない。しかし、押しが強すぎると顧客の気持ちが離れてしまう。そのぎりぎりの線を敏感に感じ取りながら、その線を踏み外すことなく商談を進められるのが、優れた「バランス感覚」である。
これは、顧客だけでなく、上司に対して企画を提案するときも同様であり、また、部下に注意・指導するときも、この「バランス感覚」が問われる。