マーケティング

2025.06.15 10:15

顧客は「選ぶのが面倒」、人にスッと選んでもらうための発想

Getty Images

お酒初心者向けに「この100本から始めれば、お酒の世界にどんどん惹きこまれていく」というストーリーを描いた。詳しくなれば、数千種類もの品揃えを誇る本店を楽しめるようになる。そんなカスタマージャーニーを設計した。

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この「素人には多いけど、玄人には少ない」100本という本数が絶妙にハマり、IMADEYAは我が家への出店を決めた。

結果は想定以上。開店後、この店をきっかけにお酒の世界にハマっていく地元客が年々増加。ありがたいことに、店舗は毎年売上を伸ばし続けている。また、今では他の店舗でも「はじめの100本」を展開している状況だ。生活者の選択肢をあえて狭めたことで、逆に市場の間口が広がったのだ。

選択肢を絞ると、間口は広がる

なぜ選択肢を減らすことが、かえって顧客獲得につながるのか? その背景には、選択における心理的な負担の問題がある。

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まず、多すぎる選択肢は「もっと良い選択があったのでは」という後悔を生み出す。また、初心者にとって「正しく選ぶ」というプレッシャーは想像以上に大きい。特に専門性の高い分野では「変な選択をして恥をかきたくない」という心理が働く。知識なしに多くの選択肢から選ばなければならない状況は、多くの人にとって純粋にストレスでしかないのだ。

だからこそ、そのストレスからの解放が効果的な戦略となる。選択肢を適切に絞ることで、選択の負担が軽減され決断が早くなる。また、選択肢が少ないからこそ、本質的な違いが理解しやすくなり、初心者でも安心して選べるようになる。

こうして心理的な障壁を取り除くことで、新規顧客は安心してその分野に足を踏み入れることができるのだ。

価値あるものを際立たせる

このように今の提供者がとるべき道は、選択自体からお客さんを解放してあげることだ。一番シンプルな方法は、選択肢を減らせばいい。やみくもに新しい商品を作ることにリソースを費やすのではなく、今のラインナップを並べて「本当にこれ以上の種類が必要だろうか?」と自問自答する勇気が必要だ。

逆説的だが、今の選択肢の多さは、作り手の「自信の無さ」や「意思の無さ」の表れでもある。一つの機能で勝負する自信がないから、競合と同じような機能も追加しておかないと不安なのだ。そうして機能を増やしているうちに「自分たちだからこそできること」というユニークポイントがわからなくなってくる。

選択肢を減らすことには、自分たちのユニークポイントを見直す意味もあるのだ。それゆえに時には「今あるラインナップを半分まで減らす」と結論ありきで仕分けをはじめるのもいいだろう。

お客さんにとっても、自分たちにとっても、選択肢を減らすことは「可能性を狭める」のではなく、「本当に価値あるものを際立たせる」ことに他ならない。

選べない時代だからこそ、提供者は選択のガイド役となり、迷いなく手に取れる環境を整えるべきなのだ。

注:記事中リンクから商品の購入などを行なうと、編集部に収益が入ることがあります。また事業者は、商品の選定や記事内容には一切関与していません。

文=小島雄一郎

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