別の韓国識者は「だから、韓国の既得権層は李在明氏に強い警戒感を持っている」と語り、保守系候補の金文洙氏の支持を表明した李洛淵元首相の例を挙げた。李洛淵氏は5月27日、金氏への支持を表明した際、李在明政権の誕生を「怪物独裁国家」という強い言葉で非難した。李在明氏は昨年4月の総選挙の際、党代表としての地位をフルに使い、自分を支持する政治家を次々に党候補として公認して、「私党化を図っている」という批判を受けた。李洛淵氏もその際、党を離れた。前述の韓国識者は「李洛淵氏はソウル大学法学部を卒業し、大手紙の東京特派員を務めた人物。いわば、進歩の中の既得権層の一人と言える」と話す。
従来とは全く違う形で最高権力者にのし上がった李在明氏は今後、韓国既得権層の破壊を試みるのか。韓国の識者や元当局者たちは、その第1目標は尹錫悦前大統領夫妻になるとみている。元当局者の一人は「李在明氏は、政治報復はしないと言ったが、戒厳令の責任を問う姿勢も強調している。戒厳令の処理をうやむやにしたら、李氏の支持者も黙っていない」と語る。別の元当局者も「尹夫妻は間違いなく監獄に行くことになるだろう」と話す。韓国で既得権の代表と言われていた検察や情報機関、軍、大手メディア、財閥なども緊張を高めているという。
李在明氏は闘争を繰り返した半生から、権力の維持に最大の関心を払う一方、誰も信用しない人物だと言われる。進歩系の元当局者は「李在明氏が一人の意見だけに従うことはない。必ず、他の意見も聞いてクロスチェックし、何が利益なのかを見極める」と語る。韓国の有権者は現在、良好な日韓関係を望んでいるため、李氏は当面、日韓関係の維持に努めるとの見方が強い。
ただ、闘争の末に韓国大統領の座を射止めた李在明氏に対し、面と向かって李氏が嫌がる正論を吐ける側近は見当たらない。李氏が今後、政治的な暴走を始めたとき、少なくとも28年春の次回総選挙までは、「共に民主党」内に暴走を食い止める人物は出てこないだろう。李洛淵元首相が懸念した「怪物独裁国家」出現の危険もあながち虚言とは言い切れない。


