国内

2025.06.05 13:30

米中対立へのウルトラC:川村雄介の飛耳長目

だが、他方で中国は日本の最大の貿易相手国であり、大企業から中小企業まで対中ビジネスに従事している。何といっても地理的に近く、交流の長さは千年単位だ。米国との関係は、同盟国同士にもかかわらず不確実で不安定である。トランプ発言に一喜一憂していては企業も国ももたない。

advertisement

打開策はないものか。

ひとつには、この際、優秀な中国人の日本帰化を進めることである。多くの若い優秀な中国人が日本の大学を目指し、日本企業で働こうとしている。彼らの大半は、数年前までは米国を志向していたトップクラスの人材だ。やみくもな移民政策は副作用が大きいが、真に優れた人材を選別的に受け入れるのならメリットは大きい。そもそも遠い日本の建国時代には先進的な渡来人が大きな役割を果たした。平城京や平安京などの都市建設や最先端の科学・技術・文化は彼らがもたらした。元来が、日本は東アジアからの帰化人と在来人が融合してつくられている。21世紀版の都造営のような発想があっても良い。

Yellow Bananaと自嘲的に言う(肌は黄色だが中身は白い、というアジア系米国人への蔑称)ダニーに水を向けると「それは良い考えね。だが同時に中国とディールすべきだ。台湾は中国のものとして認め、尖閣は日本のものと認めさせることが先決だ」。

advertisement

そんな無茶な、と返すと、彼の論拠は単純明快だった。「だって、トランプと習近平の勝負はついた。習近平の勝ちだ。早くトランプから離れて習近平に近づくほうが日本のためだ」。

それに、とダニーがウィンクする。「トランプは4年後にはいないが、習近平は10年後も健在だぜ」。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボードを兼務。

文=川村雄介

タグ:

連載

川村雄介の飛耳長目

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事