ネコはご飯が欲しいときは甘え鳴きをするなど、声によるコミュニケーションが多い子と少ない子とがいる。また知らない人に対して攻撃的になる子や温和な子もいる。その違いは、ある遺伝子の長さに大きく関係していることがわかった。
ペットのほかに救助や介助など使役動物として活躍することも多く産業的な価値が高いイヌは遺伝子解析の研究が進んでいるが、風来坊の性格が強いネコの研究は少なく、わからないことが多い。そこで、京都大学野生動物研究センターの村山美穂教授らによる研究チームは、家庭で飼育されているネコを対象に、行動特性とアンドロゲン受容体遺伝子の関係を調べた。
男性ホルモンの作用に必要なアンドロゲン受容体遺伝子は、個体によって長さが異なり、それがヒトやイヌの行動特性に関係していることがわかっている。ネコの場合はどうなのか。今回の研究でわかったのは、この遺伝子が短い子は、とくにオスにおいて、長い子にくらべて喉をゴロゴロと鳴らしたり要求鳴きのような特定の鳴き方をすることが多いという点と、とくにメスにおいて見知らぬ人に対する攻撃性が強いという点だ。
ネコの原種とも言われるベンガルヤマネコやスナドリネコ、トラなどのネコ科動物11種を調べると、すべてが短いタイプだった。純血種のネコは、雑種にくらべて長いタイプが多いという。今回の研究に協力してくれたのは保護ネコくんたちなので、アンドロゲン受容体遺伝子の長さにバラツキがあったようだ。
喉をゴロゴロ鳴らしたり要求鳴きをするのは、子ネコが母ネコに甘えておねだりをするための行動とされている。生まれたときから人間の世話を受けている純血種はその必要がないため、長く飼われているうちに人間が好む遺伝子の個体が残りやすかった可能性があるということだ。攻撃性の少ない子が好まれ、掛け合わされてきたという事情もあるだろう。なるほど、純血種のネコが温和ながらツンとおすまししているのは、そういうわけだったのか。
研究チームは、これからもより多くのネコ科動物に対象を広げて調査を行うという。遺伝子から行動特性を推測できるようになれば、ネコだけでなく野生ネコ科動物においても「飼育環境を個体に合わせる」ことで動物福祉に役立つ可能性があると話している。



