教育

2025.06.04 09:00

トランプの下で米国は「営利大学大国」に? 職業学校を支援、所得向上効果には疑問符

連邦助成金の一時停止や留学生受け入れ資格の取り消しなど、ハーバード大学への攻撃を強めるトランプ米大統領(Kayla Bartkowski /Getty Images)

投資家たちも、トランプ政権は営利教育業界にとって追い風だとみているのは間違いない。BMOキャピタル・マーケッツの株式調査部門のシニアアナリスト、ジェフリー・シルバーによると、昨年11月のトランプ当選後、このセクターの株価は上昇している。たとえば大学や医学大学院、獣医学大学院などを運営するアドタレム・グローバル・エデュケーションの株価は、トランプの当選以降61%上昇しており、当選翌日には9%の急騰を演じた。営利大学や技術学校を所有するペルドセオ・エデュケーションの株価も46%上昇しており、こちらも選挙翌日に11%も跳ね上がっている。

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CECUは、トランプによるハーバード向け資金の振り替えという提案や「キャリア教育に対する継続的な関心」を称賛する声明を出した。その中ではこうも述べている。「職業学校を支援する最善の方法は、民間のキャリアスクールが直面している規制上の負担を軽減するとともに、手に職をつけたい学生たちが最も質の高い学校を選べるようにする資金を拡充することです」。議会はまさにその方向へと動いているようだ。

一つの壮麗な法案に盛り込まれた新たなワークフォース・ペル・グラント制度は、大学院の学位を持たない人が8〜15週間の職業訓練プログラムに参加する際に利用できる。一定の制限はあり、たとえば郵送で課題を提出するタイプの通信講座は対象外で、また、対象となるプログラムは州の承認が必要になる。ただし、注目すべきは、そのプログラムが認定を受けている必要はないという点だ。

公共政策シンクタンク、サードウェイで教育プログラムのディレクターを務めるミシェル・ディミノは、この法案の以前のバージョンには教育の質を保証するための基準が含まれていたが、下院で可決された法案ではそれが骨抜きにされていると指摘する。現行法案では、対象となる教育プログラムは「修了率70%以上」と「修了生の就職率70%以上」を要件としているが、前者は短期プログラムの終了率としては低いハードルであるうえに、ディミノによるとどちらの数字も容易に操作可能だという。「私たちは、悪質な大学が卒業生を自校で雇用して、ちょうど就職率が測定される時期に彼らを就職している状態にする事例を見てきました」と彼女は説明する。「時には、大学はすでに仕事を持っている人をターゲットに学生集めをすることもあります。そうすれば、就職率の指標で良い数値を出せるからです」

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翻訳・編集=江戸伸禎

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