ビリオネアでX(旧ツイッター)のオーナーであるイーロン・マスクは米国時間6月2日、暗号化されたメッセージと音声およびビデオ通話が可能な「XChat(Xチャット)」の立ち上げを発表した。メタのWhatsApp(ワッツアップ)の競合になると見られるこのサービスは、メッセージの自動消去機能を備え、「あらゆる種類のファイル」の送信が可能という。
週内に展開が開始されるXChatは、Xを「あらゆるサービスに対応するアプリ」に変貌させるというマスクの野望の一環と見られている。
マスクは2日のXの投稿で、順調に行けば「今週中」にXChatの導入を開始すると明らかにした。
This week, if there are no scaling issues
— Elon Musk (@elonmusk) June 2, 2025
新サービスのXChatは、かつてのツイッター時代から存在するダイレクトメッセージ(DM)機能を拡張するもので、暗号化されたメッセージのやりとりやファイル共有、メッセージの自動消去に対応する。さらに、電話番号が不要の音声及びビデオ通話が可能になる。
Xの一部のプレミアムユーザーは、すでにXChatを利用可能になっているとTechCrunchは報じている。マスクは、この機能に「ビットコインスタイル」の暗号化を使用すると述べたが、ビットコインは暗号化を使用しておらず、暗号技術とデジタル署名でセキュリティを確保しているため、この発言は混乱を招いたとTechCrunchは指摘した。
マスクは以前に、XのDMを暗号化メッセージアプリのSignal(シグナル)と似たものにしたいと投稿していた。彼はまた、XChatの競合になり得るメタが所有するWhatsAppのセキュリティが杜撰だと繰り返し批判していた。
DMs should be encrypted, so that it is impossible for anyone at Twitter to see the public’s DMs, just as is the case with Signal or iMessage
— Elon Musk (@elonmusk) December 9, 2022
マスクは、2022年10月にツイッターを買収するにあたって、この買収が「Xというすべてを備えたアプリ」を生み出すプロセスを加速させると述べており、彼は今もこのビジョンをXのリンダ・ヤッカリーノCEOとともに掲げている。
マスクは、Xを金融サービスを含む多機能アプリにする構想を描いており、1月にVisaとの提携を発表し、XがZelle(ゼル)やVenmo(ベンモ)のような送金機能を持つようになると述べていた。Xはまた、人工知能(AI)チャットボットのGrok(グロック)も提供している。「すべてを備えたアプリ」というコンセプトは、決済やゲーム、SNS、Eコマースなどの多様な機能を持つ中国のWeChatから着想を得たと見られている。
Buying Twitter is an accelerant to creating X, the everything app
— Elon Musk (@elonmusk) October 4, 2022
フォーブスは、世界で最も裕福な人物であるマスクの保有資産を4183億ドル(約60兆円。1ドル=142円換算)と推定している。彼は、テスラの発行株式の約12%と、スペースXの42%を保有している。マスクは、ツイッターを2022年10月に440億ドル(約6.2兆円)で買収した後にプラットフォームの名称を「X」に改めた。