政治

2025.06.03 12:30

SNS上で「舌戦」を繰り広げるトランプ米大統領、実際の戦争の引き金にも

米国のドナルド・トランプ大統領。2025年5月30日撮影(Kevin Dietsch/Getty Images)

米国のドナルド・トランプ大統領。2025年5月30日撮影(Kevin Dietsch/Getty Images)

米国のドナルド・トランプ大統領は5月27日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する批判を強め、同大統領がウクライナとの和平交渉を拒否したことは「火遊び」だとたしなめた。

トランプ大統領はこの日、自身が創設したソーシャルメディア(SNS)のトゥルースソーシャルに「ウラジーミル・プーチンが気づいていないのは、もし私がいなかったら、ロシアにはすでに非常に悪いことがたくさん起こっていただろうということだ。本当に悪いことだ。彼は火遊びをしている!」と投稿した。同大統領はその2日前にも、ロシアがウクライナに対して2022年の侵攻開始以降最大規模の空爆を行ったことを受け、プーチン大統領が「完全に狂ってしまった!」と非難していた。

この発言に対し、ロシアのSNS「フコンタクテ」では、トランプ大統領を「認知症」や「道化師」などとやゆする投稿が相次いだ。プーチン大統領の側近であるロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長もトランプ大統領の一連の投稿に反応し、X(旧ツイッター)に次のように投稿した。「プーチンが『火遊び』をしており、ロシアに『本当に悪いこと』が起きるというトランプの発言について。私が知っている本当に悪いことは、第三次世界大戦だけだ。トランプがこれを理解しているよう願っている!」

トランプ大統領が考えている以上に言葉には重みがある

トランプ大統領がSNSで激しい非難を浴びせたのはこれが初めてではない。政界入りする以前から、トランプ大統領はSNSを大衆との直接的な通信手段として使い、敵を罵倒してきた。政権に就いて以降、その傾向はさらに強まっている。

米南カリフォルニア大学でコミュニケーション学の教壇に立つジュリアナ・カーシュナー博士は、トランプ大統領はSNS、特に自身が立ち上げたトゥルースソーシャルに不和の種をまくことを「情報伝達上の使命」としているとみている。

同博士は、政治的立場にある人物によるこのような思い付きの発言は受け入れられるべきではなく、政府の最高レベルの要職に就く人物は特に注意すべきだと指摘した。「このような発言は、国家間の意見の相違を無秩序に公にすることになる。事実かどうかに関わらず、汚い部分がすべて暴露されている状態では、外交を行うのは難しい。こうした類の投稿を見る利用者の多くはすでに大統領に共感を持っている傾向にあり、たとえ事実関係に問題があったとしても、大統領の発言を拡散し、他人の目にさらすことになる。大統領であるという事実だけでもSNS上の投稿が人の目に触れる機会が増え、情報伝達上の不手際がより一層問題になるのだ」

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翻訳・編集=安藤清香

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