6. キャリアの不確実性と成長の停滞
タレントLMSの調査では、働く人の82%が現在の自分の役職は安全だと感じていることが確認されている。しかし、会社の未来と関連するかたちで質問すると、信頼感は62%に低下する。こうした短期的な職の安定と、長期的なキャリアの成功の断絶は、静かな崩壊が入りこむ条件になる。
解決策:
・特に、技術統合に伴って役職が変化する場合には、進歩の可能性を示す明確なキャリアパスを構築する。
・業績のレビューとは別に、成長機会だけに注目してキャリアの発展について話す場を四半期ごとに設ける。
・従業員を、「変化する環境におけるキャリアの前途を示せるリーダー」とペアにするメンターシップ・プログラムを設定する。
7. 管理職との分断と、懸念の無視
前述の調査では、静かな崩壊を経験している労働者のうち、「上司が自分の懸念に耳を傾けない」と述べる人が47%に上ることが判明した。こうしたコミュニケーションの断絶は、早期の介入を妨げる。従業員が問題提起をやめてしまい、管理職の側から問題が見えなくなり、その結果、静かな崩壊が深刻化して、パフォーマンスと生産性に影響する。
解決策:
・ミーティングへの参加の減少、自発的な共同作業の減少、といった静かな崩壊の初期徴候を、トレーニング担当の上司が気づくようにする。
・従業員が報復をおそれずに、安心して懸念を表明できる匿名のフィードバック手段を設ける。
・構造化された「傾聴セッション」の場をつくる。つまり、管理職が即座に結論に飛びつくのではなく、従業員の声に積極的に耳を傾ける場だ。
静かな崩壊から、持続可能なエンゲージメントへ
静かな崩壊は勤労意欲が徐々に失われていることを意味し、そのまま放置すると生産性の低下、イノベーションの抑圧、そしていずれは離職につながる。しかし先を見越したリーダーシップがあれば、そのサイクルを逆転させられる。
静かな崩壊は、従業員の性格ややる気を反映するものではない、と心に刻もう。むしろ構造的な問題の一症状であり、リーダーにはそれに対処する力がある。静かな崩壊のサインとなる行動に断固たる措置を講じることで、チームの生産性を救うだけでなく、繁栄する組織の基礎を築き、未来に向けた備えを整えられるはずだ。


