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2025.06.03 13:30

寄付DXで100億円突破 ソニーとコングラントが挑む「未成熟な市場」

深田陽子|ソニーベンチャーズ(写真左)・佐藤正隆|コングラント(同右)

深田陽子|ソニーベンチャーズ(写真左)・佐藤正隆|コングラント(同右)

佐藤正隆は2020年5月、自身が創業し、代表取締役を務めていたWebサービス・システム開発のリタワークスからのスピンアウトでコングラントを設立した。同社は「あらゆる困難に寄付が届く世界の実現」をビジョンとして、ソーシャルセクターと企業向けに「寄付DXシステム」を提供。寄付募集、決済、CRM(顧客関係管理)などファンドレイジングに必要な機能をワンストップで提供するもので、17年のリリース以降、導入団体は3000以上、寄付流通総額は100億円を突破している。

24年10月に同社が実施したシリーズAラウンドに、ソニーベンチャーズの深田陽子は投資担当として参画した。その理由とは。


深田:寄付というテーマは、社会貢献活動やインパクト投資の文脈でとらえられることが多いですが、我々にとって投資はリターンを得ることが大前提。ビジネスとしてのスケールやマネタイズに向けた戦略、将来的なビジョンに共感し、普段はフォロー投資家の立場をとることが多いなか、共同リード投資というかたちで参画しています。

佐藤:日本には、ソーシャルセクターに属する組織が20万ほどあるといわれていますが、DXはあまりにも進んでいない。「寄付DXシステム」は、もともと僕自身が寄付をしようとしたときに、オンラインのクレジットカード決済ができない課題に直面したことがきっかけで提供し始めたのですが、この業界にはDXのほかにも多くの課題があります。まず、日本で活動するさまざま組織の社会的な認知の不足。また、寄付するきっかけとなるプラットフォームが海外に比べて圧倒的に少ない。最近では、クラウドファンディングが普及したおかげで、大きなプロジェクトにはお金が集まるようになってきましたが、中小規模の団体はまだまだ資金集めに苦労しています。だから、僕らは団体のファンドレイジングの支援にも取り組んでいる。そして、もうひとつの重要な視点として、日本は寄付する側の体験が未成熟だと感じる部分があります。

深田:確かに、まだ改善できる余地が多くある領域と感じます。

佐藤:例えば、自分が1年間で寄付した先とその金額を一覧で確認する仕組みがない。各団体からの寄付証明の郵送物をひとつずつ保管して自分で計算しないと、正確な情報を把握できないのです。自治体のふるさと納税で寄付金から一定額を差し引いた分が税控除を受けられるように、認定NPO法人などへの寄付でも寄付金の40%ほど税控除できる仕組みがあります。この課題を解消すれば、寄付による税優遇という仕組みも、寄付する人の数も広げていけるはず。そこで僕たちは、5月に「スマート寄付アプリGOJO」という新サービスをローンチする予定です。いろんな団体の情報を集約して、個人が行う寄付を一元的に管理できるもので、将来的には確定申告の手続きまで含め、スムーズに税優遇を受けられる仕組みを整えていきます。

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文=眞鍋 武 写真=平岩 享

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