一方、レアル・マドリードの年間収益は11億2900万ドルと、NFLのダラス・カウボーイズの収益とほぼ並んでいるにもかかわらず、同クラブの評価額(67億5000万ドル)はダラス・カウボーイズの101億ドル(約1兆4400億円)と比べて大きく見劣りする。この背景には、これらの2つのスポーツリーグに対する投資家の期待や、将来の成長見通しに大きな隔たりがあることが指摘される。フォーブスの直近データでは、NFLチームの平均的なバリュエーションは、収益の約9倍で、NBAはさらに高く11.7倍に達していた。一方、22の欧州のサッカークラブの平均的なバリュエーションは、収益の約5.1倍にとどまっていた。
欧州のクラブが抱える課題
欧州のクラブやリーグにはそれぞれ特有の課題があり、多額の負債やオーナーシップ要件の厳格さ、放映権収入の伸び悩みや減少、スタジアムの改修を阻む官僚的な規制などが挙げられる。さらに、欧州全体にわたる選手の年俸の上限(サラリーキャップ)が存在せず、欧州のサッカーファンはクラブが収益を重視することに反発する傾向が強い。たとえば2024年12月には、イングランド・プレミアリーグの複数クラブのファンが一斉にチケット値上げに抗議するデモを行い、最終的にリヴァプールFCとマンチェスター・シティFCがチケット価格の据え置きを発表した。
それとは対照的に、米国のMLSに所属するクラブのバリュエーションは、収益の約9.3倍に達しており、投資家の間でより楽観的な見方が支配的だ。そのため、ロサンゼルス・ギャラクシーは、収益が約9500万ドル(約136億円)と、アストン・ヴィラの約3億4300万ドル(約490億円)の3分の1以下であるにもかかわらず、評価額ではアストン・ヴィラの評価額を1億ドル上回る10億ドルとされている。
それでも、北米のリーグほどではないにせよ、欧州クラブの価値も着実に上昇している。プレミアリーグのアーセナルとニューカッスル・ユナイテッドFCの評価額は、2024年からそれぞれ31%と38%の増加を記録し、34億ドル(約4860億円)と11億ドル(約1570億円)に達している。
さらに、6月に米国で開催されるFIFAクラブワールドカップや、2026年のFIFAワールドカップによって、サッカーの人気がさらに高まることが期待できる。


