キャリア

2025.06.03 08:00

「過労死」は日本だけの問題ではない、求められる「人間中心の人材戦略」

Shutterstock.com

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仕事のストレスが精神的・肉体的な病気につながることは多くの研究が示している。しかし、燃え尽き症候群の後に、キャリアや自分の命を終わらせかねない危険なステップがあることを理解している人はあまりに少ない。慢性的な仕事のストレスが管理されないまま燃え尽き症候群になり、そのまま放置してしまうことで「過労死」につながることもあるのだ。米国でも、毎年過労死が報告されている。

過労死:米国の労働力における生と病

これはパラドックスではないだろうか。私たちが生きていくために毎日行っている仕事、請求書を払い、食卓に食べ物を並べ、私たちを生かしている仕事は、私たちを殺すものでもあるのだ。米国ではこうした現象が話題に上がることは少ないが、日本人は頻繁にそれを口にする。日本では「過労死」と呼ばれ、週60時間から70時間の労働に耐えられずに命を落とす労働者が年間何千人もいる。

不安、うつ病、自殺、ストレス関連疾患は増加の一途をたどっている。研究によれば、管理されていない仕事のストレスは、私たちの神経系を破壊し、「闘争・逃走反応」、高血圧や心臓病、2型糖尿病、免疫システムの低下を引き起こす。管理されない過労は私たちの健康を害するだけでなく、管理されない人生、家庭崩壊、そして最終的に過労死にもつながる。

米国では45%の労働者が自分自身を現代のワーカホリック(仕事中毒)だと考えている。またレポート『2024-2025 Aflac WorkForces Report』によれば、米国人労働者の59%が中度または高度の燃え尽き症候群に直面しているという。

しかし、英語にはもともと「過労死」を表す単語もなく、そうしたことが話題に上がることも少ない(現在、英語では過労死は「Karoshi」という単語になっている)。この国では、労働者が過労死によってデスクで倒れることを心臓発作、脳卒中、糖尿病と呼ぶが、実はそれらは過労死につながる、管理されていない仕事のストレスや燃え尽き症候群の症状なのだ。つまり、今こそ、この目に見えない殺人鬼に名前をつける時がきている。

労働者は過労死を避けるために行動している

新しいレポートによると、2025年には62%の従業員が1年前よりもストレスを感じており、燃え尽き症候群や過労死がより現実味を帯びたことで、職場での退職が進んでいるという。65%の従業員が、自分のことに集中するために仕事を辞めることを考えているが、これは私たちの感覚よりも大きな数字であることだろう。

上記Aflacによるレポートは、燃え尽き症候群に苦しむ従業員の64%が、今後12カ月以内に新しい仕事を探す予定であるとしている。また、燃え尽き症候群はミレニアル世代で最も顕著に見られ、その66%が中度または高度の燃え尽き症候群に直面していると答えている。もちろん、米国では過労死に関する統計は存在しない。

しかし、過労死はあらゆる世代に均等に存在するリスクであり、そのリスクは若い世代だけにとどまらない。Vistageが発表した新しいデータによると、燃え尽き症候群は企業の頂点にまで存在し、CEOの大多数(71%)が定期的に、あるいは時折、燃え尽き症候群を感じ、3人に1人(32%)が過去1年間に「頻繁に」あるいは「ほぼ毎日」燃え尽き症候群を経験したと答えている。

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翻訳=江津拓哉

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