キャリア

2025.06.03 08:00

「過労死」は日本だけの問題ではない、求められる「人間中心の人材戦略」

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Founder Shieldの共同創業者兼COOであるカール・ニードバラによると、経営幹部の間でも、こうした理由を背景にした退職が進んでいるという。2024年に退任した米国のCEOは過去最高の2221人(前年の1914人から増加)で、その数は増加の一途をたどっている。訴訟に発展することも多いAIやサイバー脅威への対応から、取締役会や世間からの絶え間ないプレッシャーなど、CEOの仕事には圧倒的なストレスがのしかかる。

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「容赦ない要求、厳しい監視、個人的な充足感の欠如によって進むCEOの退職が続く中、一流の人材は『成功』の意味を勇気を持って再定義しています」とニードバラは説明する。「企業はリーダーを効果的にサポートし、経営幹部が苦しまないようにするために、賢いリスク管理戦略を導入しなければなりません」

仕事以外の時間が、本当の意味で人生を楽しむための時間として使われていないことも問題だ。新しい調査によると、ほとんどの従業員は、そうした自由な時間を「仕事の疲れを癒す」ためだけに使っているのだ。Headwayが2000人の労働者を対象に行った調査によると、その60%が、自由な時間は仕事の疲れを癒し、燃え尽き症候群を避けるために使われており、人生を楽しむための時間にはなっていないと答えている。また、同調査によると、4人に1人が、趣味を追求するような単純なことをすることに罪悪感を感じており、4分の1の人が、もはや仕事以外の人格がないように感じているとも答えている。

Headwayの専門家は、調査対象者の36%が仕事のために運動をやめ、32%が人付き合いを止め、27%が旅行を完全にやめてしまったことを危機的状況と呼んでいる。従業員の4人に1人は、楽しむための行動を止めてしまっているのだ。

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「夕方や週末を仕事の疲れを癒すためだけに費やしている人は、仕事で生計を立てているのではなく、ただ生き延びているだけなのです」とHeadwayの認定生産性コーチ、シンディ・カヴァートはいう。「時間が経つにつれ、やる気や創造性、成功の原動力となる自己意識が削がれていきます。これを無視する企業は、離職率が高くなり、貴重なポテンシャルを失うリスクがあります。持続可能な生産性とは、従業員を限界まで追い込むことではなく、人間らしくいられる時間と空間を与えることから生まれるのです」

燃え尽き症候群と過労死を防ぐ戦略

セルフケアは最初の防衛線であり、従業員のセルフケアを優先する企業は収益を上げるという研究結果がある。多くのプロフェッショナルは、仕事のストレスや燃え尽き症候群のリスクは、出世するための前提条件だという俗説を信じている。しかし、科学はその逆を示す。仕事のストレスや燃え尽き症候群は、キャリアの可能性を損なうのだ。

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翻訳=江津拓哉

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