米ピュー研究所の最近の調査によると、米国の労働者の52%がロボットに仕事を奪われることを懸念しているというが、将来的には総合格闘技団体UFCの格闘家たちも、その不安に直面することになるかもしれない──。というのは先日、中国の高性能ロボット開発企業「ユニツリー・ロボティクス(宇樹科技)」が世界で初のヒューマノイド(人型ロボット)同士が戦うキックボクシング大会を開催したからだ。
これらのロボットたちのパンチやキックは、まだ少々ぎこちないもので、攻撃や防御の際にバランスを崩して倒れてしまうこともある。しかし、4月中旬には北京でヒューマノイドによるハーフマラソンも開催されており、この分野のテクノロジーは今後、急激に進化する可能性がある。
香港のアジアタイムズによると、このロボットのキックボクシングの試合は5月25日に浙江省の杭州で開催されたもので、ユニツリーのG1ロボット4体が出場した。G1は身長が122センチ(約4フィート)、体重が約36キロ(約80ポンド)という比較的小柄な人型ロボットで、パンチにはほとんど威力がなく、動きがかなり遅いため、殴り合うというよりは、ボクシンググローブをつけた手で押し合うような対戦になった。
また、キックや膝蹴りが相手に当たらず、空振りになってしまう場面も多かった。しかし、G1ロボットは攻撃を受けても簡単には倒れず、小刻みに足を動かしてバランスを保っていた。また、転倒した際も床に手をついて自らの力で立ち上がっていた。
人型ロボットによるキックボクシング大会は、現段階では試合の迫力よりも、「ロボット同士が戦っている」という事実が興味深く、楽しんで見られるものになっている。そして、ここにはまた別のプラスの側面がある。
筆者は格闘技が好きだったが、それはある種の後ろめたさを感じる楽しみでもあった。プロの格闘家たちが、互いを徹底的に攻撃し破壊し合う格闘技の試合は、脳へのダメージなどの長期的な健康被害を引き起こす可能性があるため、ほぼ観戦しなくなった。しかし、人型ロボット同士の試合であれば、そうした心配をせずに見ていられる。
今回の試合は、中国の国営テレビで放送されたとアジア・タイムズは報じている。また、人型ロボットのトレーニングはAIによって行われたという。
急激に進化するロボットとAI
「ロボットにさまざまな動きを教えるのは簡単なことではない。私たちはAIを使って彼らをトレーニングした」と、ユニツリーの取締役のワン・チーシンは中国中央電視台に語った。
「人型ロボットのイノベーションは急速に進んでおり、AIがそれを支えている」と、米国の人型ロボットメーカーApptronik(アプトロニック)のジェフ・カルデナスCEOは、最近の筆者のインタビューで述べていた。「ロボット分野は現在、指数関数的に急激なスピードで進化している。従来のロボットは、事前にプログラムされた動作を行うものだったが、今ではロボットが自分で学習する段階になっている」と彼は指摘した。
進化した人型ロボットたちはもはや、重い荷物を運んだり、ネジを締めたり、床をモップで掃除したりするだけではない。彼らはリングの上で、互いにパンチを放ったり、蹴りを入れたりするのだ。