食&酒

2025.06.11 15:15

NYセレブ・世界の富裕層注目の軽やかな贅沢。ニューヨークワインというネオリッチ

「ウォルファー・エステート」創業者クリスチャン・ウォルファーの長女は 高級ブティックを展開。NYセレブを顧客に持つ

日本市場に広がる可能性──NYワインは受け入れられるか?


この「軽やかな贅沢」は、日本市場でも着実に浸透し始めている。後藤夫妻は2013年からNYワインの輸入を手がけるパイオニアだ。10年以上のNY在住経験を活かし、日本ではほとんど認知されていなかったNYワインの魅力とストーリーを伝え続けてきた。2022年、東京・世田谷区にオープンした直営店では、昼はスタイリッシュなNYワイナリーのテイスティングルーム、夜はブルックリンのワインバーをイメージした空間として、NY文化を発信している。

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NYワイン専門インポーター「GO-TO WINE」代表の後藤芳輝・由華夫妻
NYワイン専門インポーター「GO-TO WINE」代表の後藤芳輝・由華夫妻

「ワインって、つい勉強してから飲むものという印象があるけれど、ニューヨーカーのように『何も考えずに気軽に楽しめばいい』と伝えたい」。由華氏のこの言葉通り、店舗では「ジャケ買いで選んでみたら美味しかった」「子どもがプールで遊んでいる間に大人が楽しめる3000円台のワインが欲しい」といった、肩肘張らない消費スタイルが定着しつつある。

価格帯も税込3650円から高くても1万3000円前後。ワイン愛好家からは「品質を考えると非常にコストパフォーマンスが高い」と評価される一方、初心者にとっては「日常を少し格上げしてくれる」存在になりうる、絶妙なポジションにあるといえる。

NYワインは、国内のガストロノミーシーンでも注目度が高まりつつある。フードフレンドリーでペアリングに組み込みやすく、主力品種のリースリングとカベルネ・フランは他産地との差別化が容易だ。何より「えっ、ニューヨークでワインを造っているんですか?」という驚きが、記憶に残るワイン体験へと繋がりやすい。

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和食との相性も言うまでもない。きれいな酸味と旨味、そして「2人で1本飲める」軽やかさは、素材の味を大切にする和食とみごとに調和する。「カベルネ・フランは、山椒をたっぷり使ったウナギ料理とも驚くほど合うんです」と由華氏の薦めるペアリングからは、新たなワイン体験の可能性が見えてくる。

柔らかく熟成したカベルネ・フランも絶品だ
柔らかく熟成したカベルネ・フランも絶品だ

世界のワイン市場が大きな転換点を迎える中、NYワインが体現する「軽やかでエレガントな贅沢」は、単なるトレンドを超えた新たなワイン文化の兆しを示している。

ワインは学ぶものではなく、「好きだから飲むもの」。100点満点の評価よりも、語れるストーリーを。そんな「飲むラグジュアリー」の在り方に、これからの豊かさのヒントがあるのかもしれない。

文=水上彩 編集=石井節子

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