フィリピンで大型商業施設やホテルの開発を手がける不動産開発大手DoubleDragon(ダブルドラゴン)が、4番目の国外の展開先としてサウジアラビアを選んだことが明るみに出た。同社は2023年、初の海外展開として、日本の北海道ニセコでの大規模なホテルの建設計画を発表している。
フィリピンのファストフード大手Jollibee(ジョリビー)創業者のトニー・タン・カクションと不動産王のエドガー・シア2世が共同所有するダブルドラゴン傘下の「Hotel101 Global(ホテル101グローバル)」は、旅行需要を見込むサウジアラビアに進出し、25億ドル(約3600億円。1ドル=144円換算)規模の投資で1万室を建設する計画を発表した。
ホテル101は、サウジアラビアのHorizon Group(ホライゾングループ)との提携で、メディナやリヤド、ジェッダ、アブハ、アルウラの5都市にホテルを建設する計画を5月29日に明らかにした。各ホテルには平均500室が設けられるという。
この合弁事業は、ホテル101が計画している米ナスダック市場上場に先立つものだ。ダブルドラゴン共同会長のシアは、「2025年前半の上場を目指す」と2月にフォーブスアジアに語っていた。同社のナスダック上場計画は、シンガポールを拠点とするホテル101が香港の特別目的買収会社(SPAC)との23億ドル(約3312億円)の合併を完了したことを受けてのものだ。
ホテル101のハンナ・ユロ=ルッチーニCEOは「サウジアラビア王国では国内外の観光が急成長しており、非常に大きな機会があると見ている。サウジアラビアは当社にとっても世界的に最も魅力的な市場のひとつになるはずだ」と述べている。
ホテル101によれば、サウジアラビアは同社が当初から進出先の候補に選んでいた25カ国のひとつで、2023年の国際観光客数2700万人、国内観光客数7900万人を記録し、観光収入が約670億ドル(約9.6兆円)に達していたという。またサウジアラビアは、中東地域におけるフィリピン人の海外労働者の主要な派遣先であり、彼らの送金はフィリピン国内の消費を支えている。
客室を約3600万円で投資家に先行販売
ホテル101は、すべての宿泊施設で標準化された客室を提供することで、効率性と価格の手頃さを両立させたグローバルチェーンの構築を目指している。同社は、1980年代の米国で人気を博した「コンドテル(コンドミニアム+ホテル)」のコンセプトを採用しており、建設中の客室を平均25万ドル(約3600万円)で投資家に先行販売する。投資家はホテルの客室収入の30%を受け取ることができ、さらに年に最大10日間まで無料で宿泊できる。
「当社はホテル101の迅速な建設モデルと我々の現地での知見を組み合わせることで、王国全体に1万室の高いクオリティと手頃な価格を両立させた客室を追加する」とホライゾングループのアブドゥルラフマン・シャルバトリCEOは述べている。
ホテル101は現在、フィリピン国外においては北海道、スペインのマドリード、米国ロサンゼルスで建設中の施設を保有している。フィリピン国内では2棟のホテル1100室以上が稼働中で、さらに9棟を建設中という。同社は、2050年までに100万室の供給を目指している。
フォーブスが昨年8月に発表したフィリピンの富豪50人ランキングで、エドガー・シアは保有資産3億4000万ドル(約490億円)で29位にランクインしていた。タン・カクションは、同29億ドル(約4176億円)で6位につけていた。
不動産や貿易、ホスピタリティ、物流分野の事業を展開するホライゾングループは、サウジアラビアでアウディやベントレー、ポルシェ、ブガッティといった高級車ブランドの販売を手がけるSAMACO社に出資している。



