韓国の製薬・美容医療企業「PharmaResearch(ファーマリサーチ)」の株価は、同社の主力製品の「サーモン注射」と呼ばれる肌の再生注射「リジュラン」の人気の高まりを受けて、ここ1年で230%急騰した。これを受け、同社の創業者で会長のチョン・サンスは韓国の新たなビリオネアに浮上した。
現在67歳のチョンは、韓国のコスダック市場(韓国証券先物取引所KRXの新興株式市場)に上場するファーマリサーチの株式の30%を保有しており、フォーブスは5月27日時点で、彼の保有資産を12億ドル(約1730億円)と推定している。ソウルの中央大学で薬学を学び、大熊(デウン)製薬に勤務したチョンは、2001年にファーマリサーチを設立し、2015年に上場させていた。
ソウル東部の江陵市に本社を置くファーマリサーチの主力製品のリジュランは、2014年に初めて発売されたサーモン由来のDNAを使用した肌の再生注射で、米国のキム・カーダシアンや、韓国の女優のハン・イェスルが施術を受けたことを公表して注目された。
ファーマリサーチが先日発表した第1四半期の売上高は、前年同期比56%増の1170億ウォン(約122億円)で、純利益は前年同期のほぼ2倍の360億ウォン(約38億円)に達していた。同社の売上の約78%はアンチエイジング製品によるものだった。
「一般的なフィラー施術が人工的なボリュームの増加に重点を置いているのに対し、リジュランは有効成分を真皮層に直接注入することで、皮膚細胞の再生とECM(細胞外マトリックス)の安定性回復を誘導するという点で差別化されている」と同社は提出書類で述べている。
ファーマリサーチはプレシデンス・リサーチのデータを引用して、「世界のアンチエイジング市場は、2024年の約730億ドル(約1兆50億円)から2034年には1409億ドル(約2兆30億円)に成長すると見込まれる」と述べている。この急成長の背景には、セルフケアへの意識の高まりが挙げられている。
さらに、韓国の化粧品および美容機器の世界的な人気も同社の追い風となっている。韓国当局のデータによると、2024年、韓国の化粧品輸出額は前年比21%増の102億ドル(約1兆5000億円)に達し、過去最高を記録した。
こうした「Kビューティー」のブームによって、韓国の美容機器メーカーClassys(クラシーズ)の創業者のチョン・ソンジェも、フォーブスが4月に発表した「韓国の富豪50人」ランキングに、推定保有資産7億6000万ドル(約1090億円)で初登場していた。
プライベートエクイティの大手もファーマリサーチに注目しており、CVCキャピタルは昨年9月、同社に2000億ウォン(約210億円)を出資して10%の株式を取得した。「ファーマリサーチは、提携先のCVCキャピタルの投資先の販売ネットワークを活用して、東南アジアの美容クリニック市場への進出を開始したようだ。東南アジアはリジュランの輸出の大部分を占めているため、同社の事業は2025年に急成長が期待できる」と、新韓証券のアナリストは昨年11月の調査メモで述べていた。



