当事者でない人たちの見解についても調査
研究チームはまた、女性の方が男性よりも稼ぎの多いカップルに対する、当事者でない人たちの見解についても調査を行なった。2400人以上の参加者を対象とした実験で、研究チームは、結婚している男性と女性のカップルに関するシナリオを提示した。職場で出会い、共通の趣味を持ち、強固な関係を結んでいるように見える男女のカップルに関するシナリオだ。
また参加者のうち半数は「男性の方が女性より収入が多い」というシナリオが告げられ、残りの半数は「女性の方が男性より収入が多い」というシナリオが告げられた。つまり、カップルのうちどちらが多く稼いでいるかという点が異なるようにした。
女性の方が稼いでいるというシナリオでは、ふたりの関係の満足度はより低く、離婚によって終止符が打たれる可能性が高くなると、参加者は評価した。このシナリオで変更された箇所は収入に関する部分のみだったことを考えると、この結果は、人々が順調な結婚生活を、一家の大黒柱としての男性の役割と結びつけて考えていることを示している。
メディアは、現在の文化的規範を強化している
最後に、94の新聞や雑誌に掲載された、一家の稼ぎ手となった女性に関する記事を分析したところ、メディアでも、女性が男性よりも稼いでいる関係が、「普通でない」「問題だ」という論調で報じられていることが分かった。
こうした関係にある女性は、伝統的な男女の役割の破壊者とみなされ、男性パートナーは弱々しい存在として描かれていた。研究論文の著者たちは、このようなメディアの描き方は、現在の文化的規範を反映しているだけでなく、それを強化することに一役買っていると考察している。
男性を大黒柱とする考えは、比較的新しい概念
これらの研究結果は、「男性が家庭の大黒柱」だとする規範が、どれだけ根深いものであるかを裏付けるものだ。こうした状況によって、女性の中には、仕事での成功と幸福な結婚生活のどちらかを選ばざるを得なくなる者もいる。
興味深いことに、男性を大黒柱とする考えは、人類の文明においては比較的新しい概念だ。人類の歴史において約95%の期間は、人は狩猟採取民として生活していて、こうした社会では女性の貢献度が男性と変わりなかったことを示すエビデンスもある。
当時は、主に女性が担っていた採取によって得られた食料が、食生活の半分以上を占めていたことが研究で明らかになっている。また、女性が狩猟にも参加していた可能性が高いという。その後、新石器時代に入ってからも、女性は農業の普及に中心的な役割を果たし、作物の栽培や加工を担った。
それでも、男性が稼ぎ手となるのが自然だというステレオタイプは、いまだに広く浸透している。
今後、男女間の収入格差がなくなれば、結婚した男女のカップルの半分で、妻が夫よりも稼ぎが多い状況になるだろう。それまでは、「夫婦のうちどちらがより多くの稼ぎを得るべきか」に関する時代遅れの概念が続くだろう。こうした状況がいつまでくのかは予想が難しい。


