格安EコマースアプリのTemu(テム)や「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」で知られる、中国のPDDホールディングス創業者の黄崢(コリン・ホアン)の保有資産は、一夜にして57億ドル(約8151億円。1ドル=143円換算)も減少した。米国時間5月27日に同社が発表した四半期決算を受けて米ナスダックに上場する同社株が急落したことを受けてのものだ。
フォーブスは、45歳のホアンの現在の保有資産を363億ドル(約5.2兆円)と推定している。彼は、2021年にPDDの会長職を退いたものの、今もなお同社株から莫大な富を得ている。元グーグル社員のホアンは、2024年8月に一時的に中国で最も裕福な人物となっていたが、今では中国で6位に沈んでいる。
PDDが27日に発表した2025年第1四半期(1月〜3月)決算は、売上高が前年同期比でわずか10%増の957億元(約1.9兆円。1元=19.92円換算)にとどまり、純利益は147億元(約2928億円)と、前年同期比で47%も減少した。この発表を受けて、同社の米国預託証券(ADR)は時間外取引で一時17%急落した。
PDDの幹部は、27日のアナリスト向け電話会議で複数の課題に言及した。同社の海外向けEコマースサイトTemuは、関税による打撃を受けている一方で、国内事業も競争の激化に直面している。
「当社プラットフォーム上の売り手は、関税の引き上げによって大きな打撃を受けている。彼らの多くは、迅速かつ効果的に対応する能力を持っていない」と、PDDの会長兼共同CEOのチェン・レイは電話会議で語った。
これを受け、PDDは出店業者から徴収する手数料を引き下げ、マーケティング支援などのサポートを拡充している。4月に同社は、今後3年間で1000億元(約2兆円)を出店業者向けの支援策に投入すると発表したが、これが同社の利益を圧迫すると見られている。
少額貨物に対する関税免除「デミニミス」の終了が痛手
一方、トランプ政権は最近、中国から輸入される少額貨物に対する「デミニミスルール」と呼ばれる関税免除措置を終了した。申告額が800ドル(約1144円)以下の貨物への関税を免除するこの措置に後押しされて、Temuや競合のSHEIN(シーイン)、アリババのAliExpress(アリエクスプレス)らは米国市場で急成長を遂げたが、今後は厳しい状況に直面する。
上海の調査会社86Researchのワン・シャオヤンによると、Temuは現在、米国内での調達を進め、米国の出品者を取り入れることで高関税を回避しようとしている。米中間の関税をめぐる交渉は現在も続いているが、中国からの小口輸入品に対する関税は、今後も30%以上に達する可能性がある。
ワンによるとTemuは以前、中国の業者が米国に送る貨物の運送および通関業務を一括で引き受けることで多額の手数料収入を上げていたという。しかし現在同社は、中国国内においても経済成長の鈍化を受けて、出店業者向けの手数料を引き下げていると指摘した。
香港の調査会社Blue Lotus Capital Advisorsのエリック・ウェンによればPDDは現在、中国においてもアリババやJD.comなどとの激化する競争に直面している。これらの企業は現在、「インスタント・リテール」と呼ばれるオンラインからの注文を1時間以内に配達するサービスへの投資を進めており、互いに市場シェアを奪い合っている状況という。



