米国人は海外移住を夢見るだけでなく、実現している。最近の調査によると、米国人の17%が向こう5年以内に外国に移住することを考えており、5%は移住に向けて積極的に動いていることが明らかになった。海外に移住するには、投資によって居住権を得るゴールデンビザ(査証)制度から、祖先をたどって市民権を得る制度まで、さまざまな方法がある。しかし、なかには「学生になる」という、外国移住の足がかりとなる賢い方法を見つけた人もいる。
イタリアを拠点に、外国人向けの移住コンサルティングを手がけるファインディング・ラドルチェビータは、主に学生ビザで欧州に留学する若者の家族を支援している。ところが昨年、ある中年の顧客が別の要望で同社を訪れた。それは、海外留学を望む顧客本人のために、学生ビザの取得を代行してほしいというものだった。筆者の取材に応じた同社の設立者キム・エングルハートは、「最初は、これは1回限りのことだと思っていた。ところがその後、同じような問い合わせが相次いでいる」と語った。
居住権取得への道としての留学
近年、海外で学ぶ米国人留学生の数は増加している。留学推進団体の米国際教育研究所(IIE)が2024年11月に公表した報告書によると、米国人留学生の数は22~23年にかけて前年比49%増加した。エングルハートによれば、学生ビザを希望する40代以上の顧客の数が特に急増しているという。
その理由はさまざまだ。異なる文化に浸りたい場合もあれば、生涯学習の認知効果に関する報道を見て留学を思い立ったという人もいる。しかし、多くの人にとっての究極の目標は、留学を足がかりとして長期的な居住権を得たり、場合によっては第二のパスポート(旅券)、つまり市民権を取得したりすることにある。
筆者の取材に応じた移住コンサルタントのアマンダ・クレコウスキも同様の傾向が見られると証言した。「欧州の大学院への出願に対する関心が高まっている。顧客が本気で出願していることも、私は理解している。顧客は、自分に適性があり、興味をそそられるようなコースに応募しているからだ」。クレコウスキによると、多くの顧客は以前から「いつかは」大学院に進学したいと考えていたが、最近の社会情勢により、行動を早めるようになっているようだ。



