気候・環境

2025.05.30 10:00

5年以内に「最も暑い年」が訪れる確率は80% 国連機関が予測

Shutterstock.com

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世界気象機関(WMO)は28日、2025~29年の間に、世界の年間平均気温が観測史上最高となった24年の記録を破る確率は80%との予測を発表した。これにより、気候変動の影響が悪化し、異常気象の可能性が高まるとみられている。

同機関は、今後5年間のうち少なくとも1年間は、世界の平均気温が産業革命前の1850~1900年と比べて1.5度以上上昇する可能性が86%あると予測している。同期間の世界の平均気温が産業革命前の数値より1.5度以上高くなる可能性は70%だという。1.5度という数字は、気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」で定められた重要な基準だ。WMOのために報告書を作成した英気象庁も、向こう5年間のうちで世界の平均気温が産業革命前の水準を2度超える可能性は1%と、非常にわずかながらあると警告した。

向こう5年間の世界の平均気温は、産業革命前と比較して1.2~1.9度上昇すると予測されている。WMOはまた、北極地方は世界の他の地域より3.5倍速い速度で温暖化が進み、氷床が急速に溶けて海面が上昇する恐れがあるとみている。

なぜ「1.5度」という数字が重要なのか?

産業革命前の平均から世界の平均気温が1.5度上昇することは、2015年のパリ協定で定められた重要な基準値だ。協定の締約国は、地球の気温上昇を2度以内に抑えることを目標としている。WMOの最新の予測が正しければ、20年間の平均を考慮しているため、必ずしもパリ協定の基準を破ることにはならない。とはいえ、今後複数回にわたって基準値を超えれば、気候科学者の間で警戒を呼び起こす可能性が高い。

WMOのコ・バレット事務次長は、直近の10年間は観測史上最も気温が高かったと指摘。「残念ながら、今回のWMO報告書では、向こう数年間も緩和の兆しが見られず、私たちの経済や日常生活、生態系、そして地球への悪影響が拡大する恐れがある」と警鐘を鳴らした。

米国のドナルド・トランプ大統領は1月の大統領就任直後、パリ協定からの脱退を命じる大統領令に署名した。同大統領は第1期政権時にも同様の政策を取った。それ以降、トランプ政権は複数の環境保護政策を撤回している。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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