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2025.06.09 15:15

47都道府県の伝統工芸を船旅で 「飛鳥III」と地銀がつくる海上市場〜福岡編

気づけば欲しくなる「本物」の魅力

これからの地場産業について語るFFG社長の五島久
これからの地場産業について語るFFG社長の五島久

「47の部屋をつくる『ASUKA meets 47都道府県』の前に、飛鳥の事業パートナーであるアンカー・シップ・パートナーズ社長の篠田哲郎さんから、船内で各地の伝統工芸品を展示したいという構想をお聞きし、これは乗客、工芸作家双方にとって嬉しい取り組みだと、その場で賛同しました。

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当時、私は地方銀行協会の会長を務めていましたので、他の地方銀行にもお声かけしよう、ということにもなりました。しかし、紹介するにはまずは自分たちで『伝統工芸の紹介』をやってみよう、と考え、福岡で伝統工芸品を飛鳥の客層と同じ富裕層に紹介するイベントを行ったんです」

有田焼の人間国宝14代今泉今右衛門の作品が飛鳥IIで飾られていたことから、その作品を含めた伝統工芸品をザ・リッツ・カールトン福岡で展示。今右衛門には講演も行ってもらい、想像以上に好評だった。そして何より、多くの作品が購入された。この成功によって全国の魅力が飛鳥に集う流れが加速した。

FFGが協賛の「今泉今右衛門講演会と日本工芸会×飛鳥クルーズ作品展」に展示された作品
FFGが協賛の「今泉今右衛門講演会と日本工芸会×飛鳥クルーズ作品展」に展示された作品

ちなみに、飛鳥Ⅲの「福岡の部屋」にはどんなものが飾られるのか聞いてみたところ、「焼物では、小倉藩主時代の細川忠興が朝鮮から陶工を招いて生まれた上野(あがの)焼、飛び鉋などの躍動感ある文様で知られる小石原焼。それから、博多織や八女簾(すだれ)の4つを紹介してもらう」そうだ。

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飛鳥のプロジェクトは伝統産業側から考えれば、富裕層という有望なターゲットに知ってもらい、購入してもらう工夫だが、そもそも伝統工芸などの現代の実用的なニーズから外れた感のある産業について銀行はどう考えているだろうか。

五島に聞いてみると、「篠田さんから話を伺った時に、ちょうどFFGの存在意義について行内で議論していた時でした。この4月から『一歩先を行く発想で、地域に真のゆたかさを。』を存在意義に掲げているのですが、その“真のゆたかさ”について話をしていたんです。経済的、物質的な豊かさはイメージしやすいですが、その先にある精神的な豊かさ、つまり、心の豊かさ、幸せの実感こそ重要だろうと。そういう意味で、伝統工芸品を含めた芸術やアートというのは、人生に潤いを与え、心を豊かにしてくれるものだと思ったわけです。私自身、音楽をやってきたので、音楽から勇気や元気をもらったり、癒されたりしてきましたからね」と、伝統は守るべきもの、未来へつなぐ立場だ。

とはいえ、銀行に限らず企業は、これまでメセナ活動やCSRを通じて支援してきても、景気によって縮小していくことが多かった。そこで、銀行の業績の影響を受けるのではないかと質問を投げかけると五島は、「確かに、以前は経済活動で得た収益を社会貢献活動に配分するという考え方が強かったと思いますが、近年サステナビリティの高まりとともにCSV(Creating Shared Value)、つまり、ビジネスを通じて社会貢献と利益双方を追求する、という考え方が強まりつつあります」という。

それは単なる支援ではなく、伝統産業をビジネスとして成り立たせるための支援である。その難しさを危惧していると、伝統を持続可能なものにしている事例は、先の飛鳥に関する取組み以外にも福岡に多くあるのだと五島氏はいう。

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文=古賀寛明

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