気候・環境

2025.07.03 15:15

4万年前の有害宇宙線時代。ヒトは「鉄分性の日焼け止め」塗り生き延びた

Wonderful Engineering

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約41000年前、地球は磁場のアイデンティティを失いかけたことがあり、その混乱がホモ・サピエンスをネアンデルタール人よりも生き延びさせた可能性がある。

地磁気が著しく弱くなり、ヒトは放射線にさらされた

ミシガン州立大学の新たな研究によると、その約41000年前、「ラシャンプ・エクスカーション」と呼ばれる地磁気の著しい弱体化によって、地球に放射する宇宙線量が急増した。空にはオーロラが舞い、地表は有害な紫外線にさらされた。そんな中、ホモ・サピエンスは、洞窟に住むことや原始的な日焼け止めの発明といった方法で工夫を施し、生き延びた可能性があるというのだ。

地球の磁場は、溶融された外核に渦巻く電流によって発生する、目には見えないバリアだ。この磁場は放射線を地表からそらす働きを持ち、とくにそれは極地に集中しているため、オーロラが極地に現れる。しかし、このバリアは永久不変ではない。実際、地磁気はさまよいやすく、完全に反転することさえある。地磁気変動と呼ばれるこのような現象は、地球の歴史上180回以上起きている。

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中でもとくに劇的だったのは、42200年前から41500年前にかけて起きたラシャンプ・エクスカーションだ。この期間中、地磁気の強さは通常の10%ほどにまで低下した。防御機能が弱まったことで、地球は紫外線や宇宙線にさらされ、オゾン層も一時的に薄くなった。通常の地球防衛は低下し、地表の生命がその影響を被ることとなった。

ミシガン大学の研究チームは、この地磁気異常が起きた時期の地球を3Dシミュレーションで再現した。この時期はネアンデルタール人の絶滅前の最終局面と重なっていた上、人類の進化においても重要な時期であったことが明らかになっている。放射線による生物への影響は深刻であり、先天性欠損や視覚損傷などのリスクが高まってしまう。

赤色や黄色の鉱物顔料「オーカー」が——

しかしながら、決してすべてのヒト属が同じように脆弱だったわけではない。ホモ・サピエンスは、その状況に適応したようなのだ。

考古学の専門家らによれば、この時期にホモ・サピエンスが大いに利用するようになっていた洞窟は、自然の紫外線シェルターとして機能していた。また、発見されている当時の「目打ち」や「縫い針」といった骨製の道具からは、衣類技術の進化が示唆される。こうした衣服は、保温だけでなく、放射線から身体を守っており、昼間の活動を可能にしたようだ。

また興味深いことに、この厳しい時期の遺跡からは頻繁に、赤色や黄色の鉱物顔料「オーカー」が見つかっている。オーカーは古代美術に多々関連付けられているが、より実用的な用途があったようだ。肌に塗ることで、鉄分を多く含むオーカーは原始的な日焼け止めとして機能した。

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「かなり効果的な日焼け止めです」とミシガン大学人類学准教授のレイヴン・ガーベイ氏は説明する。「その生産量は増加していますし、ラシャンス時代を通した解剖学的な現代人類研究の結果も、人々が宇宙線から自らを防護するためにも使っていたことを示唆しています」

この発見は相関的なものではあるが、説得力のある仮説を提示している。ネアンデルタール人が姿を消した一方でホモ・サピエンスが繁栄した理由は、単なる知能や運ではなく、太陽からの脅威に対する適応力だったのかもしれない。

研究成果は科学誌『Science Advances』に掲載された。

引用:ミシガン州立大学

(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」5月17日の記事から転載したものです)

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