連日、米の価格の話で持ちきりだ。世間の関心は米の小売価格に集中しているが、米を作っている当の生産者はどう感じているのだろうか。
気になるのは、米の小売価格の高騰が生産者に恩恵をもたらしているかだ。減反政策、気候変動、燃料費高騰、高齢化などに翻弄され続ける米農家の経営は大変に厳しいことをよく耳にするため、少しでも農家の収入につながっているのなら多少は納得できる。本当のところはどうなのか。産直通販サイト「食べチョク」は、食べチョクに登録している全国の米生産者111人を対象に、現場の声を可視化するための実態調査を2度にわたり実施した。

それによると、今回の小売価格高騰の「利益が還元されている」と感じる農家はおよそ6割だった。また経営状況は、補助金を含めて赤字と答えた農家は2024年度は4割強だったものが、2025年度は3割強に減り黒字の割合が増えている。しかし安心はできない。問題は、これからも頑張って米を作ろうと意欲が湧くほど儲かっているかだ。

たとえば、1ヘクタールの田んぼを持つ小規模農家の場合、収穫できる米の量はおよそ6トン。JAに出荷すると、2023年と2024年の実績では10キログラムあたりの買取価格が約2300円なので、少し高くなったとして150万円程度。農林水産省の『農業経営統計調査』によれば生産にかかる費用は1ヘクタールあたり約116万円ということで、じつに大まかな計算だが、手取りは34万円にしかならない。黒字とは言え、どの程度の黒字かは容易に想像がつく。しかも経費がそのわずかな利益を圧迫し続けている。
