北米

2025.05.29 09:00

政権交代で米国のエネルギー政策が激変、トランプ大統領が原子力へかじ切り

原子力推進に向けた大統領令に署名した米国のドナルド・トランプ大統領。2025年5月23日撮影(Win McNamee/Getty Images)

原子力推進に向けた大統領令に署名した米国のドナルド・トランプ大統領。2025年5月23日撮影(Win McNamee/Getty Images)

米国では先週、ドナルド・トランプ大統領と議会が大きな政策変更を行った。昨年11月の大統領選挙以降、同国のエネルギー政策は劇的に変化している。

米国のエネルギー政策を、表向きは気候変動対策を目的とした国際協定に適合させることに重点を置く、民主党のジョー・バイデン前大統領の時代は終わった。共和党のトランプ政権はむしろ、エネルギーと人工知能(AI)技術の両面で米国が優位に立つ新時代を築くことに注力している。同大統領が2週間前にサウジアラビアで行った演説で打ち出した資源が豊富な国々との通商ベースの外交政策の原則は、それを如実に示している。

民主党がバイデン前大統領の代表的な功績の1つとたたえる2022年インフレ抑制法の完全撤廃に向けた動きはないものの、下院は21日、風力発電や太陽光発電、さらには電気自動車(EV)への多額の補助金を削減する、いわゆる「1つの大きく美しい法案」を可決した。これに伴い、原子力発電にも再び注目が集まっている。

同法案は、風力発電や太陽光発電の開発業者が新規プロジェクトの投資税額控除を利用することを厳しく制限する一方で、新規原子力発電所の建設業者に対する控除を拡大するもの。それだけでも、政策の優先順位が大きく変化したことを示している。

トランプ大統領の原子力関連の大統領令は何をもたらすのか?

トランプ大統領は23日、原子力発電の促進を目的とした4つの大統領令に署名した。これに先立ち、クリス・ライト・エネルギー長官は上院歳出委員会のエネルギー・水資源開発小委員会で、同大統領令の意図に触れた。共和党のビル・ハガティー上院議員とのやり取りの中で、ライト長官は、原子力は「単なる発電をはるかに超え、巨大な規模に拡大することができる重要な技術」だとした上で、「私は原子力の推進に全面的に賛成だ」と強調した。

トランプ大統領は23日、国防生産法を発動し、米国が主にロシア産ウランの輸入に大きく依存していることを理由に国家非常事態を宣言した。同大統領はかねてより米国のエネルギー安全保障の水準が危険なほど低いと主張しており、1月20日の大統領就任演説では、国家エネルギー非常事態を宣言していた。

同大統領が就任初日に国家非常事態を宣言したことについて、ダグ・バーガム内務長官は米ニュースサイト「リアル・クリアー・ポリティクス」の取材に対し、中国とのAI軍拡競争に勝てるだけの電力を確保する必要があるためだと説明。米国は電力網に問題を抱えているとして、「これは極めて重要だ」と強調した。

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翻訳・編集=安藤清香

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