北米

2025.05.29 09:00

政権交代で米国のエネルギー政策が激変、トランプ大統領が原子力へかじ切り

原子力推進に向けた大統領令に署名した米国のドナルド・トランプ大統領。2025年5月23日撮影(Win McNamee/Getty Images)

トランプ大統領が署名した4つの大統領令のうちの2番目の命令は、国内の供給網を優先し、大統領緊急権を使って適格なプロジェクトの許可手続きを合理化することで、ウランの国内生産と加工を促進することを目的としている。

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3つ目の大統領令は、連邦政府が所有する土地や研究所を原子力発電施設とAIデータセンターの開発のために活用する認可を与える権限を、国防省、エネルギー省、内務省の各長官に付与するもの。トランプ大統領は就任当初から、議会の立法を必要とせずにエネルギープロジェクトの許認可手続きを効率化する方法を模索してきた。連邦政府の施設や土地を活用すれば、エネルギープロジェクトの許認可を遅らせがちな要因の多くを解決することができる。その要因には、土地所有者の権利や通行権、複数の管轄区域にまたがる交通規制や騒音規制、さらには絶滅危惧種や考古学的配慮を巡る争いなどが含まれる。連邦政府は全米のほぼすべての州で広大な土地を所有していることから、トランプ政権の命令は全国的に適用されることになる。

4つ目の大統領令は、米国の原子力発電能力を現在の約100ギガワットから2050年までに400ギガワットへと4倍に増やすという野心的な目標を掲げている。だが、過去の原子力発電所の建設速度や費用を考慮すると、この目標は実現不可能だと考える専門家もいる。実際、300ギガワットの発電能力を追加するには、わずか25年間でテキサス州の送電網を3倍に拡大することに相当する。この大統領令は、従来の大規模な原子力発電所と、現在開発中の新世代のモジュール式原子炉技術の双方を促進するもので、米企業が米国内で開発することを奨励している。

これらの大統領令はすべて、トランプ大統領が23日に署名した1つ目の大統領令に結び付けられている。この1つ目の大統領令は、1974年に設立された原子力規制委員会(NRC)の官僚的で時代遅れの体制を改革しようとするものだ。新規原子炉を建設するために必要な認可を得ることをほぼ不可能にしてきたNRCを近代化しない限り、米国で原子力革命は起こり得ない。

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手続きを迅速化するため、トランプ大統領はNRCに対し、新規原子炉の許認可を1年半以内に、既存原子炉の運転再開を1年以内に承認するよう求めている。同大統領令は、NRCに1年半以内に規制構造の包括的な見直しを提案することを義務付けているが、これは極めて厳しいスケジュールだ。

米国の原子力発電の未来

EVの充電からビットコインの採掘、そして全米各地に出現しているAIのデータセンターまで、米国の電力需要は拡大の一途をたどっている。そんな中、新たな発電施設の建設許可を得るのに15年もかかる現在の規制環境では、これだけの電力需要を満たすことは不可能だろう。バイデン政権時には風力発電や太陽光発電が推進されたが、これら再生可能エネルギーでは99.999%の稼働可能時間を必要とするAIデータセンターの需要を賄うことはできない。単に、それだけの技術が存在しないのだ。

こうした現実から、多くの大手テクノロジー企業のデータセンター開発者は、電力需要を確保するために2段階の方法を採用するようになった。短期的には天然ガス火力発電に依存することになるが、長期的には原子力発電を取り入れるか完全に移行する計画だ。この政策転換が望ましい結果をもたらすかどうかは、時間の経過と、今後の米国の選挙結果によって明らかになるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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