サイエンス

2025.05.30 08:00

知らぬ間に燃え尽きにつながる「3つの悪習慣」、心理学者が伝授

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燃え尽き症候群と聞くと、長時間労働や絶え間ない締め切り、やり過ぎによる精神的負荷などを想像するかもしれない。それは事実であることが多いが、燃え尽き症候群は必ずしも明らかなストレス要因から生じるとは限らない。

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せわしなく流れていく日常における小さな習慣が、徐々にあなたのエネルギーを消耗させることもあるのだ。最初は無害に思えても、それが徐々に大きな問題になることもある。

私たちの行動の中には、それによって活力を与えるものもあれば、貴重な精神的資源を枯渇させるものもある。良い習慣を1つでも続ければ、他の良い習慣との波及効果を生み、幸福感を高めてくれる。

しかし悪い習慣も同様に、自分でも気づかないうちに、社会からの断絶感、注意散漫、疲労などの負のスパイラルを引き起こすことがある。そうした不健康な習慣に気づくのは、難しいことなのだ。また、これらの習慣の中には自分の周りの環境によって強化されるものもあり、そうした習慣が「普通」、あるいは「必要」だと感じてしまうこともある。

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そこで本稿では、気づかないうちにあなたのエネルギーを消耗させている可能性のある、よくありがちな不健康な習慣を3つ紹介しよう。

1. マルチタスク

通知やToDoリスト、開いているタブが無数にあるとき、1つのことに集中できていないと気づくこともあるだろう。

複数のアプリを頻繁に切り替えたり、食事をしながら何かを見たり、周りの人と会話をしながらテキストを打ったりといった行為は、あなたを「今」という瞬間から引き離すことになる。

こうしたマルチタスクを生産的だという人もいるかもしれないが、研究はそうではないことを示唆している。Developmental Review誌に掲載された研究では、マルチタスクをする脳の発達状況を調査した。

同研究者たちは、メディアを使ったマルチタスクを多用する人は、自分はマルチタスクが得意だと思っているにもかかわらず、注意力を測るテストの成績が悪いケースが多いことを発見した。

研究者たちの見解では、この結果は「刺激追求性(sensation seeking)」と呼ばれる特性に関連しているという。これは、メディアを用いたマルチタスクと、注意散漫をフィルターする能力の低下、両方に関連する特性である。また、そうした刺激追求性が、「実行注意(exusective attention)」と呼ばれる重要なタスクに集中し、不要な情報を遮断する能力の高低に関連しているという証拠もある。実行注意システムは、目標に向けた集中や感情調節を可能にするが、特にマルチタスクを頻繁に行う人では、その機能が低下する可能性があるのだ。

研究者らは、瞑想や注意力を高めるエクササイズのようなトレーニング法が集中力の回復に役立つと述べているが、メディアを高速かつ断片的に消費することに過度に依存してしまうと、現在の状況に集中し、持続的な目標を達成しようとする能力を低下させる可能性があるとも警告している。

つまり、マルチタスクをすることで複数の物事を一度でこなしていると感じるかもしれないが、そこには隠れた代償があるのだ。タスクの切り替えが絶え間なく続くと、注意が散漫になり、それぞれのタスクが中途半端なままになってしまう。

本来重要な能力とは、意図的に集中する力である。一度につきひとつのタスクに全神経を集中させることで、パフォーマンスを向上させ、現在の状況に集中し続ける能力を強化できる。

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翻訳=江津拓哉

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