宇宙

2025.05.29 10:30

NASAが「新月の画像」を公開、最新の太陽圏観測衛星で不可能が可能に

NASAの太陽観測衛星「PUNCH」に搭載された狭視野撮像装置(NFI)が2025年4月27日に撮影した、太陽の手前を横切る新月の画像。地球で反射した太陽光に照らされて、満月のように見える(NASA/SwRI)

NASAの太陽観測衛星「PUNCH」に搭載された狭視野撮像装置(NFI)が2025年4月27日に撮影した、太陽の手前を横切る新月の画像。地球で反射した太陽光に照らされて、満月のように見える(NASA/SwRI)

5月27日は新月だった。新月の日は、月が全く見えなくなる。だが、本当にそうだろうか?

新月のとき、月は地球から見て太陽と同じ方向にある。その姿は太陽の輝きに隠れてしまい、地球上の私たちの目には見えない。月が最も謎に包まれる1日と言っていいだろう。だが、米航空宇宙局(NASA)の新しいミッションはこのほど、最新の太陽圏観測衛星と「地球照」と呼ばれる現象のおかげで、新月の姿を撮影することに成功した。

新月とは

月は、日本時間27日正午過ぎ(12時2分)に月齢0の瞬間を迎え、太陽と地球に挟まれてほぼ一直線に並んだ。このとき、地球から見えている月の表側は完全な暗闇に包まれた。この瞬間を、天文用語で「朔」と呼ぶ。なお約2週間後にも、こんどは地球を間に挟んで太陽、地球、月が一直線に並ぶ瞬間が訪れるが、こちらは天文用語で「望」と呼ばれる。すなわち満月だ。

「スーパームーン」の新月

27日の新月は、地球から約36万44kmの距離にあり、今年3番目に地球に近い「スーパームーンの新月」だった。スーパームーンとは、地球との距離が近い状態の月を指す俗称である。天文用語では、地球の中心から月の中心までの距離を「月の地心距離」と呼ぶ。月は地球の周りを楕円軌道で公転しているため、地心距離は増減する。月が軌道上で最も地球に近づく位置を「近地点」、最も遠ざかる位置を「遠地点」という。

劇的な新月の画像、NASAが初公開

NASAは2025年3月11日、4機の小型衛星を連携させてコンステレーションとして運用する太陽圏観測衛星「PUNCH」(Polarimeter to Unify the Corona and Heliosphere:コロナと太陽圏を統合する偏光計)を打ち上げた。PUNCHは米サウスウエスト研究所(SwRI)が主導するミッションで、太陽の外層大気の最も外側にあるコロナが太陽風となる仕組みの解明を目指している。

地球軌道上に展開する4機の太陽観測衛星コンステレーション「PUNCH」のイメージ図(NASA)
地球軌道上に展開する4機の太陽圏観測衛星コンステレーション「PUNCH」のイメージ図(NASA)

このPUNCH衛星が、4月27日に太陽のそばを通過する新月のユニークな画像の撮影に成功した。先週初めて公開されたこの1枚は、皆既日食のとき以外で初めて撮影された新月の姿だ。

NASAの太陽観測衛星「PUNCH」に搭載された狭視野撮像装置(NFI)が2025年4月27日、機器の調整作業中に撮影した画像。新月と太陽の見かけの距離は約3.5度で、月は地球照に照らされている(NASA/SwRI)
NASAの太陽圏観測衛星「PUNCH」に搭載された狭視野撮像装置(NFI)が2025年4月27日、機器の調整作業中に撮影した画像。新月と太陽の見かけの距離は約3.5度で、月は地球照に照らされている(NASA/SwRI)
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翻訳・編集=荻原藤緒

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