フランス領ギアナで起こったこの出来事がとりわけ注目に値するのは、そのときの状況だ。女性を襲ったそのオウギワシが、巣を守っている明らかな兆候は見られなかった。また、以前に人間に対する刷り込み(インプリンティング)があったという証拠はなく、守るべき仲間が近くにいたわけでもなかった。捕食目的で襲ったと断定はできないが、典型的な誘因がほかに見られなかったことから、防衛行動ではなかったとみられる。
可能性として考えられるのは、大型の猛禽類は、その場のなりゆきで、小柄な人間を捕食対象とみなす場合があることだ。人間が一人きりでいたり、無防備に見えたりという一定の条件下では、なおさらかもしれない。
こうした知見は、霊長類の進化の過程で、大型の猛禽類が与えてきたと見られる影響について、より深く考えるきっかけを与えてくれる。霊長類が社会性を形成するにあたって、こうした捕食が果たしてきた役割は立証されている。今回の出来事によって、空飛ぶ捕食動物から身を守るためには、集団で生活することが大いに役立っていたという説が強化される。その女性が一人きりで、周囲に誰もいなかったら、はるかにひどい結末を迎えていたかもしれない。
さらに、フランス領ギアナでの出来事と、「タウング・チャイルド」をはじめとする有史以前の事例との間には類似点が見いだせる。タウング・チャイルドとは、1924年に南アフリカ共和国で発見された、猿人アウストラロピテクス・アフリカヌスの子どもの頭蓋骨で、死因はワシに襲われことだと考えられている。
その証拠に加え、ニュージーランド固有種のハーストイーグルや、キューバに生息していたオルニメガロニクス(別名:キューバオオフクロウ)といった絶滅した猛禽類の捕食能力に関する記録は、猛禽類が人類の初期の祖先に選択圧(淘汰圧)をかけていた可能性があることを示唆している。
滅多にないとはいえ、鳥が人間を攻撃する事例は、科学的に注目すべきだ。恐怖心をあおろうとか、そうした威厳のある生き物を悪者扱いしようというわけではない。それよりも、人間と、鳥類の頂点に立つ捕食者との間の力関係をより良く理解するためだ。
生態系の崩壊が進み、人間と野生動物の接触頻度が高まる現在、そうした行動について深く理解することはいっそう重要となっている。


