前回のコラムでは筆者が最近愛用しているAIレコーダーの利便性についてレポートしたが、実はこの新しいワークツールは、中国出身で1990年代生まれの起業家が製品化したものだ。
製品は人工知能(AI)を搭載するボイスレコーダー「PLAUD NOTE(プラウドノート)」というものだが、筆者のようなデジタル時代が到来する以前にこの業界に足を踏み入れた世代にとっても、業務効率化ツールとしてかなり重宝している。
これまで長らく中国を取材で訪ねてきたが、この便利なワークツールを世に送り出した新しい世代の中国の起業家とはどのような人物なのか。なぜこのような製品をつくり出せたのか、直接話を聞いてみたいと思った。
日本の職場文化との親和性は高い
4月24日、東京都内で、AIレコーダー「PLAUD NOTE」を製造・販売する「PLAUD Inc.」の共同創業者兼 CEOであるネイサン・シュー(Nathan Xu)氏らによるカンファレンスが開催された。筆者はその前日、ネイサンCEOに話を聞く機会を得た。
事前に質問内容として以下のようなポイントを彼に伝えていた。
・なぜAIレコーダーを製品化しようと考えたのか?
・PLAUDはアメリカで創業し、グローバルに展開しているが、日本市場に法人を設立した狙いとは?
・日本でどのようなユーザー層を想定し、ビジネスパートナーとの連携を考えているか?
・日本市場ならではの課題やチャンスをどのように捉えているか?
最初の問いについては、ネイサンCEOは次のように答えた。
「投資家としてこれまで多くの人たちと会って、貴重な話を聞く機会を得たが、その場でメモを取るというようなことができない場面も多かった。多くの魅力的なアイデアは、日常の何気ない会話のなかに含まれている。これらを記録しておくという需要はあると考えた」
また製品化については「これまでもGoogleのLive Transcribeなどの既存のAI自動文字起こしサービスがあり、10億人以上のユーザーがいたが、文字起こしの保存ができないなどの課題があった。クラウドを通じて編集機能を付加することで、テキストを保存し、要約できるようにした」と彼は語った。
そして、日本市場に対する考え方について次のような興味深い指摘をした。
「日本の職場文化がこの製品に合っていて、親和性が高いと考えた。それは日本人のメモやノートを熱心に取る習慣だ。AIレコーダーはこうした作業にかけるエネルギーや集中力の負担を軽減できるのではないか。
資料や議事録作成の効率化に役立ち、DXの一環として人件費削減や業務効率化に必ずやつながるはずだ。それが日本で現地法人を設立し、エンジニア採用や企業との連携を開始した理由だ」



