北米

2025.05.29 12:30

年間1.4兆円の経済損失か、トランプのNIHとNSF予算削減で成長が危機に

Ascannio / Shutterstock.com

科学は公共の信託であり、政治の道具ではない

公的な科学投資は、納税者の資金の中でも最も有効な使い道のひとつといえる。冒頭でも挙げたように、最新のマクロ経済研究では、国防以外の公的研究開発に1ドル(約144円)投じるたびに、最終的に1.40~2.10ドル(約202円〜約302円)の追加的経済効果が生まれるという。これは民間部門のイノベーションを間接的に後押しし、インフラ投資を呼び込み、第二次世界大戦以降の米国で生産性成長の約5分の1を担ってきた。

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しかし、2026会計年度(FY2026)の予算案に見られるような研究投資の削減は、財政的に賢明とはいえず、むしろ長期的には経済にとって自滅的である。トランプ政権はNSFとNIHから合わせて230億ドル(約3兆3120億円)を削減しようとしているが、フィールドハウスとメルテンスが最も控えめなリターン(140%)を採用しても、最終的に322億ドル(約4兆6368億円)以上の生産を失う計算だ。そこから元の投資分を差し引いても、約92億ドル(約1兆3248億円)の純損失になる。リターンを中央値(171%)で見積もれば、損失は160億ドル(約2兆3040億円)近くに膨らむ。いずれにせよ、基礎科学投資を削減しても、財政的な意味では得をしない。

「もし私たちの長期的な財政課題(これは現実のものである)に対する唯一の特効薬があるとしたら、それはより速い生産性成長なのです」と経済学者のアンドリュー・フィールドハウスは私に語った。公共科学こそが、その成長を得るための最善の方法である、と彼は主張している。

forbes.com 原文

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翻訳=酒匂寛

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