とはいえ「農作業を機械に任せる」という概念は、決して新しいものではない。ここで無人運転トラクター開発の歴史を簡単に振り返ってみよう。
・1940年代:米国のフランク・W・アンドリューがケーブルによる誘導式トラクターを開発。農業の自動化という概念を製品化する
・1950年代:英レディング大学の研究者が、電気信号を用いたセンサー誘導式トラクターを開発
・1980年代:日本のヤンマーがナビゲーションとセンサーを融合させた半自動操舵トラクター「ロボットトラクター」を発表
・2017年:インドのマヒンドラ・アンド・マヒンドラが、自動運転と作業器具昇降機能を備えた、インド初のGPS搭載型無人運転トラクターを発表
・2022年:米国のジョンディアが、AIナビゲーションシステムと3Dカメラを搭載した完全自動運転トラクターを発表。大規模農業経営を進化させる画期的な一歩となった
「食料の安定的な供給」は国の責務
各国の政府は今、補助金やローンの減免措置、各種特典を農家に提供し、無人運転トラクターの導入を促進している。この動きは特に、発展途上国で顕著だ。
米国の主要な農業地域では、「大規模農業」と「労働力不足」という2つの要因が重なる地域で無人運転トラクターの導入が加速している。広大かつ画一的な農園が多い中西部では、アイオワ、イリノイ、ネブラスカなどの州で、トウモロコシや大豆などの作物栽培に無人運転トラクターを導入し、劇的に生産力を上げている。
西海岸、特にカリフォルニア州とワシントン州では、ブドウ園などの果樹園で労働力が不足。果物栽培という繊細な作業が求められる分野でも、無人運転トラクターの導入が進んでいる。また南西部のアリゾナ州では政府のサポートにより、この地ならではの広大な農園が自動化技術の実験場となっている。
これら各地の事例から見えてくるのは、異なる地形、作物、労働力不足といった要因が無人運転トラクターの進化・普及に与えている影響だ。技術革新がさらに進み、手の届きやすい価格帯になれば、より多くの農地で機械だけがもくもくと働く景色が当たり前となっていくだろう。


