世界は「見たことのないもの」に飢えている
さまざまなエンタメコンテンツが氾濫する昨今、世界中の人々が「見たことのないもの」に飢えている。だからこそ、「サムライ」や「ゴジラ」など独自の進化を遂げてきた日本の文化に根ざしたコンテンツが今グローバルで高く評価されている。なかでもハリウッドでの評価は高まっており、2023年にはアニメ『BLUE EYE SAMURAI』がアニー賞を受賞、24年には、映画『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞、ドラマ『SHOGUN将軍』がエミー賞やゴールデングローブ賞で賞を獲得した。背景には、アニメやマンガの影響で日本文化に親しみをもつ人が増えたこともあるだろう。
そんな追い風が吹くなか、僕もグローバルでのヒットを狙って、映画『HIDARI』を製作している。23年にYouTubeで約5分半のパイロットフィルムを公開したところ460万回再生以上(4月4日現在)、12万人以上のチャンネル登録者数といった大きな反響があり、海外からの応援コメントもたくさん付いた。パイロット段階ではあるものの、米Webby Awardsなど国際的な賞も多数受賞。こうした結果を引っ提げて、今まさにハリウッドの数社と映画化についての交渉を進めている。
僕が原案・脚本・監督を務める本作はまさに、世界が「見たことのない作品」になると確信している。伝説的な江戸時代の彫刻職人「左甚五郎」の物語を、彼が彫ったかのような木彫りの人形を使って描くストップモーション作品だ。一点ずつ手で彫られた木彫り人形によるコマ撮り映像は、かつてなかったような美しさだと僕自身感じている。
日本発のエンタメコンテンツが高く評価されるようになったことで、グローバル企業からの日本のクリエイターへの関心は高まっている。コンテンツ産業は今や半導体産業や鉄鋼産業と並ぶ日本経済の柱だが、クリエイターは十分にその機会を生かせていないと感じる。24年にアニメ配信の米クランチロールのリブランディングに参画した際に、「我々は“日本の精神”を反映したクリエイティブを求めている。でも日本に発注できるクリエイターがあまりいない」という悩みを聞いた。海外と仕事をするには、最低でも英語によるコミュニケーションができ、異なる文化圏の人と協働できるメンタリティが求められる。これに当てはまるクリエイターが、残念ながら意外と存在していない。世界各国のクリエイティブエージェンシーで仕事をしてきた僕にとっては、正直ブルーオーシャン状態のように見える。
ただ、このままでは日本発のIPがすべて海外にもっていかれてしまうかもしれない。メイドインジャパンのクリエイティブに需要がある今こそ、ぜひ多くのクリエイターにグローバル市場へ挑戦してほしい。日本のクリエイティブが世界を変える、その可能性は十分にあるのだと信じている。
川村真司◎世界各国のクリエイティブエージェンシーでクリエイティブディレクターを歴任し、2011年にPARTY、18年にWhateverを設立。23年からOpen Medical LabのCCOも務める。Creativity「世界のクリエイター50人」。


