サイエンス

2025.05.27 14:00

世界のサメ取引は年間1400億円規模、絶滅を防ぐことはできるのか?

サメのひれを乾燥させる様子(Getty Images)

サメのひれを乾燥させる様子(Getty Images)

オマーンでは、サメの肝油が伝統的なアイライナーに使われている。インドネシアでは、サメやエイの皮がつまみとして供される。米国では、エイはバッファローウイング(訳注:鶏肉の手羽の揚げ物)に匹敵する人気を誇るシーフードで、アオザメやオナガザメも全米のレストランのメニューに載っている。一方、欧州ではサメの肉が「ヨーロッパアナゴ」といった誤解を招く名前で販売され、ベルギーではエイの頬肉が珍味として珍重されるほか、フランスではニシネズミザメ料理が食され、アカエイの皮を使った高級バッグが出回っている。タイでもエイやサメの皮が財布やハンドバッグに加工される。イエメンでは、サメの目の角膜が人体移植に使われたとの報告もあり、サメの軟骨はさまざまな病気の万能薬として売られている。

これらは、世界158の国と地域にまたがる調査から明らかになった、サメやエイの驚くべき用途のほんの一部だ。国際自然保護連合(IUCN)サメ専門家グループが作成した2000ページを超えるこの報告書は、サメの生態や保護に関する過去数十年にわたる研究をまとめたものだ。2005年に作成された前回の報告書は、サメのひれの需要の高まりとサメやエイなどに対する保護意識の低さを初めて浮き彫りにした。その後、状況は劇的に変化した。

近年、サメやエイの国際的な取引は多様化し、拡大している。ひれの取引がもたらす利益は依然として大きいが、サメやエイの肉の需要も急増しており、現在、その価値はひれの1.7倍となっている。肝油や鰓板(さいばん)、皮などの製品市場の急成長と相まって、サメやエイの製品の取引は世界全体で年間10億ドル(約1400億円)近くに達している。

IUCNサメ専門家グループのアレクサンドラ・モラタは「最初の報告から約20年が経過し、サメとエイは地球上で最も絶滅の危機に瀕している脊椎動物の1つとなった」と指摘した。依然として最大の脅威となっているのは乱獲で、全体の26%の種が標的にされ、その他の種の大半は混獲され、憂慮すべき個体数減少の原因となっている。イトマキエイを含むサイエイ、ムツゴロウ、カスザメ、ゴマフアザメは特に脆弱(ぜいじゃく)で、すでに壊滅的な被害を受けている。

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翻訳・編集=安藤清香

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