サイエンス

2025.05.27 14:00

世界のサメ取引は年間1400億円規模、絶滅を防ぐことはできるのか?

サメのひれを乾燥させる様子(Getty Images)

サメ漁が盛んな国は、インドネシア、スペイン、インドなどで、メキシコと米国を合わせて世界の上位5位を占めている。だが、20年にわたる調査により、各国政府は的を絞った保護対策に向けた手段を得ることとなった。カナダ、米国、オーストラリアでは、持続可能な漁業管理が模範として注目されつつある。アフリカやアジア、インド洋沖合など、以前は手薄だった地域にも調査の手が伸びるようになり、乱獲とその影響に関する状況が明らかになってきている。

advertisement
エイやサメの皮はバッグや財布などの材料に使われている(Shutterstock.com)
エイやサメの皮はバッグや財布などの材料に使われている(Shutterstock.com)

IUCNの報告書作成に協力したスイスの慈善団体セーブ・アワ・シーズ財団のサラ・ファウラーは、さまざまな理由によりサメの保護と管理は困難だが、多くの政府はサメやエイを漁業資源として、また保護すべき野生生物として扱うようになってきていると評価した。報告書について、ファウラーは、漁業を持続可能なものにし、将来の世代のために種を保存することを目的とした各国の政策をまとめたものだと説明した。

IUCNサメ専門家グループの議長を務めるリマ・ジャバド博士は次のように強調した。「この報告書は、私たちが協力して各国の勧告、特に責任ある漁業管理に関する勧告を実現できるよう、行動を呼びかけるものだ。これらの種が生き残り、水界生態系で繁栄し続けるためには、これが唯一の方法なのだ」

サメやエイは地球上で最も絶滅が危惧されている脊椎動物に含まれるが、海洋の健全性を維持し、人間の暮らしを支えるためには不可欠な動物だ。これらの動物は捕食者として海洋生態系で重要な役割を担っており、ある種は海洋を通して栄養分を循環させ、またある種はマングローブのような炭素隔離生息地を支え、気候変動との闘いに貢献している。サメやエイは沿岸地方の住民の脆弱な食料安全保障も支えており、発展途上国の中には、漁師が収入の8割以上をサメやエイの漁業に依存していると報告している。

advertisement

従って、前進するためには、地域社会から国際機関まで、あらゆるレベルでの取り組みが必要となる。報告書が指摘しているように、残された時間は少なくなっている。ジャバド博士は「伝えたいことは明確だ。これらの種の多くは危険な状態にあり、待っているような余裕はないということだ」と警告した。行動を遅らせると、これらの種が永久に失われるリスクがあり、それによってもたらされていた生態学的・経済的利益も失われる恐れがある。

これまでにも進歩はあったが、今後の課題は研究を成果に結び付けることだ。今回の報告書は、解決策が手の届くところにあることを示している。残る疑問はこれだ。私たちは手遅れになる前に行動を起こせるのだろうか?

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事