また、加藤勝信財務相は今月、日本が保有するおよそ1兆1300億ドル(約160兆円)の米国債について、交渉の「カードとしてはある」と発言した。こう発言することがどういう意味を持つか、本人が無自覚だったと考える人は認識が甘い。莫大なドル建て資産は日本側にとって交渉のテコになるものだ。ムーディーズ・レーティングスが米国の最後の最上位格付けを引き下げた現在、これらの保有高はリスクも上がっている。
先週、米議会下院で共和党が通過させたトランプ肝いりの「壮大で見事な法案」によって、すでに36兆ドル(約5100兆円)超に達する米政府債務の拡大に拍車がかかれば、この先、いちだんの格下げもあり得る。
トランプのチームに対する石破の「壮大で見事」な抵抗は、世界でもっと評価されていい。それは韓国やシンガポール、インドネシアといったほかのアジア諸国にとって、「ディール」を必要としているのはアジア側以上にトランプだということを思い出させるものだ。アジア諸国が交渉を長引かせるほど、トランプは英国型の名ばかりの貿易協定に走る可能性が高まる。
筆者は長年、アジアについて書いてきたが、これまで石破のリーダーシップに関して総じて評価は低かった。しかし彼は今回、トランプを見透かし、うまく立ち回っている。その様を見るのは痛快だ。


